旧いまここにあるもの

Yahoo!ブログ時代のアーカイブ。記事内のリンクが上手く機能しなかったり、タイトルが文字化けしたり、画像のアスペクト比が可笑しいのはダメダメな移行機能の所為。新ブログはこちら→https://imakokoniarumono.hatenablog.com/

『ドローン・オブ・ウォー』(2014年) -★★☆☆☆-

イメージ 1

スタッフ&キャスト

原題: Good Kill
時間: 104分
製作: 2014年 アメリ
出演 イーサン・ホーク(トミー・イーガン)
    ブルース・グリーン(ウッドジョンズ)
    ゾーイ・クラビッツ(スアレス
    ジェイク・アベル(ジマー)

あらすじ

アメリカ空軍のトミー・イーガン少佐の赴任地は、美しい妻とふたりの子どもと暮らす住宅街のマイホームから車を走らせ、歓楽街を抜けた場所にあるラスベガスの基地に設置されたコンテナの中にあった。
そこで無人機ドローンを遠隔操作し、1万キロ以上離れた異国をクリック1つで空爆する。
ゲームのような現実感のない戦場と家族の待つ家との往復、それがイーガンの日常であり、異常ともいえる現代の戦争の姿だった。

予告映像

感想

『TIME/タイム』のアンドリュー・ニコル監督が『ガタカ』以来のタッグとなるイーサン・ホークを主演に迎え制作した『ドローン・オブ・ウォー』を観賞。

テレビゲーム感覚で人を殺していると揶揄される無人攻撃機を題材に、無慈悲な任務によって心を蝕まれていくパイロットの姿と、テロ戦争の名の下に米国が行っている作戦の是非を問う問題作。

幸せな家庭を持つ主人公が戦争によって精神を病み家族が崩壊していくという流れは戦争物のお約束なのだが、自宅から地球の裏側に出勤し、敵の目が決して届かない高高度から地上を見下ろし、そこで暮らす人々の姿を鮮明な映像で見、その生殺与奪を判断し、命が消える瞬間を観察するという、無人攻撃機パイロットの日常を淡々と描いた点で本作は特異である。

ゲーム的でありながらそこで失われるのは本物の命であるという事実。
テロを防ぐという大義名分の下、素性も分からない人々を上司の命令で殺害する異様さ。
そこに自らの意志は介在せず、その場で戦っているという実感もないまま精神と肉体のバランスが崩壊していく…。

邦題は同監督の『ロード・オブ・ウォー』にあやかっているが、原題は空軍が標的を破壊した際に用いる「GOOD KILL」。
この用語は本編でも度々登場するのだが、戦争犯罪としか思えない民間人に対する攻撃にこの言葉が使われる強烈な違和感こそが本作の胆になっている。

と同時にラストで主人公が行った行動もまた「GOOD KILL」なのか?。という疑問を残す作りになっており、原題の秀逸さに感嘆すると共に安直な邦題で作品のテーマ性を損ねる日本の配給会社のセンスの無さが悲しくなりました。