旧いまここにあるもの

Yahoo!ブログ時代のアーカイブ。記事内のリンクが上手く機能しなかったり、タイトルが文字化けしたり、画像のアスペクト比が可笑しいのはダメダメな移行機能の所為。新ブログはこちら→https://imakokoniarumono.hatenablog.com/

『ミッション:8ミニッツ』(2011) -★★☆☆☆-

イメージ 1

スタッフ&キャスト

原題: SOURCE CODE
製作: 2011年 アメリ
時間: 93分
監督: ダンカン・ジョーンズ 
脚本: ベン・リプリー
音楽: クリス・ベーコン 
出演: ジェイク・ギレンホール(コルター・スティーヴンス大尉)
    ミシェル・モナハン(クリスティーナ・ウォーレン)
    ヴェラ・ファーミガ(コリーン・グッドウィン大尉)
    ジェフリー・ライト(ラトレッジ博士)
    マイケル・アーデン(-)
    キャス・アンヴァー(-)
    ラッセル・ピーターズ(-)
    スーザン・ベイン(-)
 

あらすじ

シカゴで乗員乗客が全員死亡する列車爆破テロが発生、政府は更なる攻撃を阻止する為ある極秘ミッションを始動させる。
それは事件の犠牲者が死亡する8分前の意識に入り込みテロリストを見つけ出すというものだった。
被験者として選ばれたアメリカ軍の大尉スティーヴンスは事件の真相に迫るため乗客たちの最後の8分間を追体験し犯人の正体に近付いて行くのだが…。

予告映像

感想

デビュー作『月に囚われた男』が各国映画祭で絶賛された新鋭ダンカン・ジョーンズ監督の長編映画第二弾。
「映画通ほどダマされる。」などという挑発的なキャッチコピーで本国から一年近く遅れて日本に配給された『Source Code』こと『ミッション:8ミニッツ』
邦題の「ミッション」の後に「:」を付けたのは『ミッションインポッシブル』人気にでもあやかろうとしたのだろうか?。
(まぁ不可能を可能にするという意味で共通点はあるのだが…)
 
物語はアフガニスタンに派兵されていた筈のアメリカ軍大尉がシカゴ行きの列車の中で意識を取り戻すシーンから幕を開ける。
状況を理解出来ぬ主人公同様、観客は物語の中に突然放り出される訳だ。
この手の作品ではよく使われる手法だが本作でも御多聞に漏れず効果的に機能している。
 
荒唐無稽とも思えるマシーンに縛り付けられ半ば強引に大惨事までの8分間を繰り返させられる主人公。
時に消極的に。時に大胆に。失敗したらリセットしてもう一回やり直し。
ゲーム感覚とはまさにこの事か、あらゆる可能性をしらみ潰しに実行し何とかこのループから逃れようと奮闘する。
1つの事象を幾度となく描きながらも緩急付けた小気味良い演出で決して飽きさせる事はない。
そして「爆弾犯の正体」と共に「自分の身に起きた真実」へと辿り着いた主人公が最後に取った行動が思い掛けない結末を呼び寄せる。
 
この結末は御都合主義的で矛盾する点も多々見受けられるのだが、限られた空間や登場人物、そして伏線を無駄なく使い切っており「上手いな」と思わせてくれる。
SFサスペンスと見せ掛けて実はヒューマンドラマだったりと『月に囚われた男』と通じる点も多く、これが監督の作風なのかもしれない。
 
しかしこの作品を「映画通ほどダマされる」などというキャッチコピーを付けて売り込むのはどう考えても可笑しい。
だって映画通であれば主人公が悲劇的な過去を繰り返し幸福な未来を模索する『バタフライ・エフェクト』や、過去の事象を覗き見るシステムを使い捜査官が犯人を逮捕しようとする『デジャヴ』を観ていない訳ないし、その辺の作品を知っていれば中盤以降の展開に驚く事はないはずだ。
少なくとも私は予想していた範囲内で物語が推移した。

そもそも「観客を騙す」という要素はこの映画の本質ではないし監督もそんな事を意図して撮ったとは到底思えず、要するに何が言いたいかと言えば宣伝手法が的外れで酷いという事だ。
本作のテーマはあっと驚くどんでん返しなどではない。
8分間という僅かな時間をただ1人全ての記憶を維持したまま繰り返す主人公と、自らの運命を知らない乗客たちの悲喜交々な姿を通し今この瞬間の尊さを浮き彫りにしていくのだ。
難解に見えて実はあっさり。そしてラストもスッキリ終わる。
サスペンスでありながらヒューマンドラマやロマンス的な側面まで感じさせる一粒で何度も美味しい作品。
ただし「映画通ほどダマされる」などという無駄な挑発を真に受けて観ると肩透かしを喰らう事請け合い。
先入観を捨て肩の力を抜いて楽しむべし!!。