旧いまここにあるもの

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日曜洋画劇場で放送された『真夏のオリオン』を観ました。

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洋画劇場といいつつ邦画作品です。
昨日は疲れていて観れなかったので録画したのを先程観賞。
 
終戦65年記念企画という事での放送だった様ですが人間ドラマとしても潜水艦映画としても実に薄っぺらい作品でメッセージ性も何もあったもんじゃない。
こんなのを終戦記念日に堂々と放送するなんて1日本人として恥ずかしくなりました。
 
そもそも、こういう作品で米軍側を日本語吹き替えしている時点でダメだと思う。
終始、大塚明夫さんと平田広明さんというビッグネーム2人の声の演技が浮きまくってて泣けました。
 
本編に関しては、とにかく見せ場となる筈のイ-77と米駆逐艦の海戦もハラハラ感がないのが致命的。
水中爆発の描き方も下手糞というかお粗末過ぎて、
何かと批判されている『終戦のローレライ』の方がアニメ的ではありますが、その辺りの見せ方は断然良かった。
 
乗組員のキャラもとにかく薄く大したドラマ性も無い。
イ-77に搭載された「回天」の乗組員達は自分達を兵器として使う事を拒み不利な戦闘を続ける上官に不満気だが、それが何かの伏線になる事もなかった。
普通あの状況であれば古今東西の潜水艦映画に習って「回天」を使用してでも生き残るべきだと主張するクルーが現れて一悶着あるべきではないのか?。
だって当時の日本軍的には「回天」を使って戦果を挙げる事は至極当然の事であり、むしろそれを使わず艦を危険にさらしている艦長の方が軍法会議ものなのではないか?。
 
あの状況で艦長に従い続けるだけの説得力や信頼関係がある様にも思えず、船員達の胸の内が不明瞭過ぎる。
少なくとも私だったら、敵艦が海上から目を光らせている状況下で沈んだ親友の艦に金属音でメッセージ送る様な艦長はごめんだ。
 
そして極めつけがあの落ち。
もう臭すぎて直視出来ません。
というかこれって戦争映画ですよね?。
戦争映画なのに日米ともに人の死が直接的に描かれていないというのはどういう事なのでしょうか?。
地上波だからカットされたのかもしれませんが、実質的に魚雷の下敷きになった1人くらいしか死という物が描写されません。
死体を映さない戦争映画があっても良いと思いますが、それで戦う事の悲惨さを描くのならもっとプロットを凝るべきです。
最終的にタイミング良く終戦を迎えて、みんな生き残っちゃう展開にも寒気がしました。
 
ちなみに日曜洋画劇場のサイトには「実話に基づいた終戦の真実」とか書かれてますが、調べると原作は殆どの部分がフィクションだそうです。
そりゃそうだ。
 
好きな方には申し訳ありませんが、私はこの作品を理想論だけの恥ずかしい映画としか見れませんでした。
こんなんならクリント・イーストウッド監督の『硫黄島からの手紙』を放送するべきです。
やる気の無い日本人が作る甘ったるい戦争映画なんかよりも重くメッセージ性のある傑作です。