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『秒速5センチメートル』(2007年) -★★★★☆-

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スタッフ&キャスト

製作 2007年 日本 
時間 60分 
原作 新海誠  
監督 新海誠  
脚本 新海誠  
音楽 天門  
声の出演 
   水橋研二(遠野貴樹)
   近藤好美(篠原明里)
   花村怜美(澄田花苗)
   尾上綾華(篠原明里)

あらすじ

遠野貴樹と篠原明里、2人の想いを軸に描かれる三話の短編集。

『桜花抄』

小学校時代に出会い、互いにほのかな恋心を抱いていた遠野貴樹と篠原明里。
だが卒業と同時に想いを伝える事の無いまま明里は茨城に引っ越してしまう。
そして時間は流れ中学生になったとある冬の日、2人は再会の約束をする。
貴樹は言えなかった想いを綴った手紙を手に彼女の待つ駅へと向かうのだが…。

『コスモナウト』

明里と再会したあの冬からしばらく後に鹿児島へ引っ越してしまう貴樹。
転校先の学校で貴樹は澄田花苗という少女と出会う。
すぐに打ち解け親しくなる2人だったが、花苗は一目見た時から貴樹に淡い恋心を抱いていた。
そんな中、貴樹が再び転校する話を聞き花苗は別れの日がくる前に勇気を出して告白する決意をする…。


流れる様に時は過ぎ、あの時の想いを伝えぬまま、貴樹と明里は大人になっていた…。

予告映像


感想

前2作の新海作品とは違い、SF的な要素は一切なく。
「想いを伝えられずに離れてしまう二人」「どれだけ願っても伝わらない想い」
それを、どうしようもく美しい情景と叙情的なセリフで描いた作品。

なんといっても緻密かつ膨大な背景に圧巻!!。
キャラクターも勿論動きますが背景が登場人物の想いすら語る新海作品の到達点とすら思える出来。
「車窓を流れる風景」「空に浮かぶ雲」「夕凪の空」「無機質で雑然とした都会の風景」…。
どのシーンの背景も、ものすごく美しい!!。
ストーリーだけなら実写で撮れなくもないと思うかもしれないが、
「現実の風景」でありながら「現実では有り得ない色彩によって彩られる景色」は幻想的かつ荘厳な空気感を醸し出していて実写では到底出せない魅力を放っている。

作画に関しても日常芝居も細かく描かれており、女性キャラは仕草で可愛いと思えるほど。
どんなアニメでもそうだが、キャラの絵だけでなく仕草でもそう感じさせるのは凄い事だと思う。

声優を勤めているのは、ほぼ実写畑の役者さんだが問題無し!!。
最近は演技の初々しさが逆にプラスになる作品が多いな~。

そして終盤に流れるテーマ曲"山崎まさよし"兄さんのOne more time, One more chance
この曲用にアニメーションPVを作ったのか!!と思えるほどに流れる詩に映像が1シーン1シーンピタリとはまっている。これが本当にスゴイ!!。


新海監督はこれまでも、気持ち伝える事が作品のメインになっている事が多かった。
携帯電話やインターネットが普及し、いつ何時でも人とコミュニケーションの取れる時代。
だがそれ故に、お互い顔を見合わせて話す機会や、再会の喜びが失われつつあるのもまた事実。
そして匿名性が高くなり本心を隠したり、逆に軽々しく口に出来る様になった今。

そんな現代に、この作品を観て「気持ちを伝える」事の出来ない主人公と自分が、多かれ少なかれ重なると感じた。
そして「大切な人への気持ちは、きちんと言葉で伝えたい」そう思えた作品でした。


あと駄文なのですが、一箇所だけツッコミがあって。
『桜花抄』で時代設定が1995年らしいのだが、小田急線が高架化している事。
意図的なのか、ミスなのか判らないが。
小田急線沿線に住む自分は違和感を覚えてしまった。