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『ブレードランナー 2049』(2017年) -★★★★☆-

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スタッフ&キャスト

原題: Blade Runner 2049
時間: 163分
製作: 2017年 アメリ
監督: ドゥニ・ビルヌーブ
    ハリソン・フォード(リック・デッカード
    アナ・デ・アルマス(ジョイ)
    シルビア・ホークス(ラヴ)
    ロビン・ライト(ジョシ)
    マッケンジーデイビス(マリエッティ)
    カーラ・ジュリ(アナ・ステライン)
    レニー・ジェームズ(ミスター・コットン)
    デイブ・バウティスタ(サッパー・モートン
    ジャレッド・レト(ニアンダー・ウォレス)

あらすじ

捜査官リック・デッカードハリソン・フォード)が行方をくらませてから30年の月日が流れた2049年
人間性を付加された最新型レプリカントにしてブレードランナーのK(ライアン・ゴズリング)は旧式レプリカントの「解任」職務の最中、丁寧に葬られた女性型レプリカントの遺骨を発見。
調査の結果、彼女が子供を妊娠・出産していた事が判明する。
子をなさないはずのレプリカントが生命を宿した事実が公になれば社会に混乱を招くとして上層部はKに子供の抹殺を依頼。
だが、それを察知したレプリカントの「繁殖」を目論むウォレス社は研究の為にその子供を奪い取ろうと画策する…。

予告映像

感想

興行収入にしか関心の無いメディアはやれ「失敗作だ」「大コケだ」とネガキャンしまくりな『ブレードランナー 2049』。
私に言わせれば前作も最初同じ理由でボロクソ叩いたんだから少しは違う切り口で批判してみろと言いたい。
 
まぁ確かに本作も娯楽性とは程遠いアート系の領域に位置する仕上がりで、人を選ぶのは間違いない。
お涙頂戴なストーリーと派手な爆発と大袈裟なVFXを正義とする人間には間違っても勧められない正真正銘のSF映画であり、リドリー・スコットの『ブレードランナー』はもとより、そのフォロワーである押井守監督の『イノセンス』などを楽しめなかった人間はその時点で適性がないと判断し身を引くのが妥当だろう。
 
娯楽性とは程遠いと書いたが、物語の構造は至ってシンプルで決して難解なわけではない。
基本は事件の謎を追う刑事(探偵)ドラマであり、その中でレプリカントやプログラムなど作られた存在を通し生命のあり方を見つめ直す純粋な愛とヒューマニズムの物語である。
 
『ドライヴ』の役柄を彷彿とさせる寡黙なライアン・ゴズリングと、有り様が完全に萌えキャラなアナ・デ・アルマスの関係性だけでもキュンキュンさせられるし、カムバックしたハリソン・フォードや、まさかのあの人の再登場など前作を踏まえたギミックも多数用意されファンであればより深く楽しめること請け合い。
 
2時間40分という目を見張る上映時間にしても気付けばあっという間に過ぎており、ハイテクでローテクなガジェットや、ディストピア未来社会の先駆けとなった前作からアップデートされた世界観。そしてお馴染みの小道具などなど、これらのビジュアルイメージだけでも好きな人は堪らないはずだ。
 
正直に白状すると私は『ブレードランナー』を観たのが後年になってからで、その時は既に古今東西で模倣されまくった上、傑作という評価が前提としてあった為、そこまでのめり込む事が出来なかった。
しかしそんな私でも知的好奇心を満たしてくれる本作は面白いと感じたし、改めて前作への興味を高めてくれた。
 
ともすれば黒幕が野放しで続編がありそうな気がしなくもないが、何もかも失った"彼"がある行動によって人間性を獲得するラストを含め深い余韻を得る事が出来た。
 
ちなみに映画を観る前は本作の3D表現に懐疑的だったが、前景と後景の空間演出が巧みで久し振りに3Dで鑑賞する意義がある作品だった事も付け加えておきたい。
特に実像と虚像がないまぜになるジョイ周りの描写、とりわけ人物とシンクロするシーンは興味深かった。