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『劇場版 空の境界/未来福音』(2013年) -★★★★★-

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製作: 2013年 日本
時間: 88
原作: 奈須きのこ
監督: 須藤友徳
脚本: 桧山彬(ufotable
音楽: 梶浦由記
声の出演:
    坂本真綾両儀式
    鈴村健一黒桐幹也
    本田貴子蒼崎橙子
    井口裕香(瀬尾静音)
    石田彰(瓶倉光溜)
    金元寿子両儀未那)
    観布子の母(くじら)

あらすじ

1998年8月。
瀬尾静音は未来が視える少女。
ひょんな事から彼女は優しげな青年・黒桐幹也と出会う。
 
同1998年8月。
倉密メルカ、職業的爆弾魔。
未来を予見する目を持つ彼は不思議な女性・両儀式と邂逅する。
 
2010年8月。
絵本作家の瓶倉光溜は上司の娘、両儀未那に懐かれていた。
2人はかつて話題となった占い師「観布子の母」を訪ねるのだが…。 

予告映像 

感想

 ネット上で発表されて以来、同人詩や商業誌と媒体を変え支持を集めてきた伝奇小説『空の境界』。
全七章からなる劇場アニメとして映像化され話題をさらった本作の原作者である奈須きのこさんが応援してくれたファンや作品に携わった全てのスタッフへの感謝の気持ちで書き上げたのが本編のサイドストーリーと後日談で構成された、この『未来福音』です。

物語は第三章直後の1998年、そして第七章から数年後の2010年という二つの時間軸を舞台に、未来視の少女と爆弾魔と占い師。
「予測」と「測定」と「予言」という、それぞれの見る「未来」と「今」を通して人と人の繋がりを描く群像劇となります。
 
瀬尾静音と黒桐幹也のパートは少女マンガ。
倉密メルカと両儀式の攻防はアクション映画。
そして瓶倉光溜と両儀未那が「観布子の母」を訪ねるパートでは上記のエピソードを踏まえた上で、本編で消えてしまった「両儀織」にスポットを当て切なくも優しいラストに誘います。
 
蒼崎橙子さんの「「未来視」とは観測した事象を脳内で高度に分析しその結果を予測する能力が桁外れなだけ」という解釈は相変わらず面白い。
「予測」と「測定」という二つの未来視。
一見するとその違いは不明瞭だが静音とメルカという登場人物によってその差が明確に表現されるので、この部分は思いのほか解り易い。
 
そして、それらとは根本的に違う本物の「予言」。
1998年に幸福な未来を占っていた「観布子の母」が、2010年になると明るい未来を視れなくなったというのは世相を反映しているようで興味深い。
そんな彼女の前に現れた光溜と未那。
前者は10年の変化に驚き、後者はかつて出会った少年との関わりを感じとります。
 
ちなみにここで未那が「お父さま」と言ったのは「幹也」の事ではなく式の男性人格だった「織」の事なのですが予備知識がないと難しいですね。
 
 その事を踏まえた上で1996年の「織」と「観布子の母」のやり取りを見ると全てのセリフが繋がり感動する事請け合い。
エンディングテーマである「アレルヤ」の詩の内容も素晴らしく、エピローグで闇に消えて行く織の後ろ姿にもグッと来る。
 
まぁ難しい事抜きにしても、天然ジゴロな黒桐くんとか、美し過ぎる極妻な式ママとか、子犬系女子な静音ちゃんとか、石田彰さんボイスでイケメンに磨きが掛かったメルカとか、あの母親にしてこの娘ありな魔性の美少女・未那の最強幼女っぷりとか、観ているだけで十分楽しいです(笑)。
 
「あなたの夢は生き続ける」
血生臭かった本編とは違い切なさと同時に爽やかな余韻が残る温かな物語。
本作はあくまでファンムービーであり、これ単体での評価は不可能ですが、シリーズ通して観た時の感動は一入。
未来福音」のタイトルに偽りなしです。