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機動戦士ガンダムUC episode6 「宇宙(そら)と地球(ほし)と」

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episode6 「宇宙(そら)と地球(ほし)と」

 
■脚本 むとうやすゆき ■絵コンテ 松尾衡古橋一浩 ■演出 初見浩一
作画監督 高橋久美子・玄馬宣彦・寺岡厳・柴田淳・荒木信二郎濱田邦彦中村誠一仲盛文・城前龍治 ■エフェクト作画監督 SNIPES
 
覚醒したユニコーンによって再び宇宙へと上がるバナージとオードリー。
だが、ラプラスの箱を狙うビスト財団によって差し向けられた連邦軍のゼネラル・レビルが彼らの前に立ちはだかる。
 
万事休すと思われたその時、窮地を救ったのはアンジェロとフル・フロンタルだった。
連邦軍が敵に回り孤立無援となったネェル・アーガマは袖付きとの共同戦線を受諾。
しかし多くの仲間を殺されているクルー達はその事を快く思わず、艦内には不穏な空気が漂っていた。
 
一方、ミネバ・ラオ・ザビとして自身の責任を果たす決意を固めたオードリーは、シャアの再来と呼ばれるフル・フロンタルラプラスの箱を用いて何を成すのか?その真意を問う…。
 
当初の発表ではepisode6で完結でしたが延長戦が決定したので物語はまだ続く。
今回はラストに向けてキャラクターの立ち位置や目的を整理し、それぞれの覚悟を明確に打ち出す事に重点が置かれ、戦闘シーンはシリーズで最も少なくなってます。
episode5から続く冒頭のゼネラル・レビルとの戦闘が全てと言っても差し支えないでしょう。
しかし、その所為で物足りなさを感じるという事もなく、濃密な人間ドラマによって最後までテンションが落ちません。
 
スタート直後、例によってローゼン・ズールの無双シーンは悪しきスーパーロボット描写になっており嫌悪感を抱くのですが、「ビーム攪乱幕」によって減衰するビーム兵器の描写など細かな描写で相殺されたので良しとしよう。
 
ガランシェールを使った囮にまんまと釣られるトライスターの面々。
エース部隊なのに今の所それらしい描写はありませんね(苦笑)。
前回ユニコーンに踏み台にされたワッツは、その後海まで落下したらしくかなりお怒りの様子。
しかし、ナイジェルの忠告がなかったらガランシェールの爆発に巻き込まれて死んでましたよ…(汗)。
 
ネェル・アーガマのハンガー内に連邦とジオンのMSが一緒に並んでいる異様な光景と共に、双方の兵の一触即発感が描かれる場面では、親衛隊がMSを床に立たせて格納する連邦の方式を「重力に魂を縛られている連中の発想」と切って捨てるのですがこれには目から鱗でした。
確かに無重力下においては何の必然性もない作りですよね。
 
今までモブキャラ程度だったネェル・アーガマのクルーも今回は長い時間登場し、仲間を殺した相手との共同戦線を余儀なくされた事への不満をぶちまけるのですが、ここでオードリーとミコットが女のアイコンタクトで意思の疎通を図るなど中々面白い展開が用意されています。
 
そしてブリッジで行われるフル・フロンタル所信表明演説(笑)。
単調になりがちな1人喋りのシーンですが、カット割りや乗組員のリアクションなど、非常に細かなドラマ的演出がなされており、中弛みしていないのが素晴らしい。
オードリーとフロンタルが実質的に袂を分かつ場面ですが、会話の中で『逆襲のシャア』の映像が挿入されたのには驚かされました。
 
闇落ちしてガッツリ老け込んでしまったリディ少尉はバージョンアップしたバンシィ・ノルンに搭乗。
しかし無いはずのお守りを確認するなど、まだ過去を捨て切れずにいるみたいですね。
同じくつま弾きにされたアルベルトの口からはマリーダへの未練や、ビスト家の血塗られた歴史なども語られ、見事な負け組チームが完成しました(笑)。
 
バナージの部屋を訪れるマリーダさんですが、食事が不味いとバナージに同意を求める姿が可愛くて仕方ない。
上手く行かないと嘆くバナージを優しく励ますのですが、私もマリーダさんに「よしよし」されたいよ。
オードリーにも「お心のままに」と言葉を掛けるなど、お姉さんを通り越してお母さんのような包容力を発揮してますね。
ホント良いお嫁さんになりますよ。
 
ネェル・アーガマが従わざるを得ない状況を良い事に横柄な態度を取るアンジェロ。
だが僚艦の撃沈を強要され遂にオットー艦長がキレる。
「その首を捩じ切ってやるぞ若造!!」
と怒鳴られ面喰うアンジェロ。
そんな艦長の言動に小さくガッツポーズを取ったり、「うんうん」と頷くブリッジクルーのカットが笑いを誘います。
 
今まで目立たなかったダグザさんの相棒であるコンロイさんも、ここに来て大活躍。
しかもバナージに
「気負うなよ。ダグザ隊長に貰った命、無駄にするな」
と言って送り出すなど、やたらと格好良い。
 
ここからepisode6のハイライトであるハンガー内でのシークエンスに突入。
全てに達観したリアリストなフロンタルに組しかれ理想を否定されるロマンチストなバナージ。
オードリーとマリーダが乗るボロボロなクシャトリヤと、それに踏み付けにされるアンジェロのローゼン・ズール
過去に囚われたジンネマンと、状況の打開に向けチャンスを伺うコンロイさん。
絡まった糸の様に敵味方が入り乱れる非常に切迫したシーンですが、立ち位置などを明確にしている為、混乱する事はありません。
 
自分のなすべき事を見失ったジンネマンが行き場のない気持ちを吐露するシーンでは
「何も…してやれなかった」
「怖かったろうに…痛かったろうに…何も…」
という絞り出すような迫真の演技に心を揺さぶられます。
 
そして「マリィ…」と娘の名前を呼び、それにマリーダが「…おとうさん」と答える。
まるで憑き物が落ちた様にジンネマンの表情が穏やかになり、「心に従え」という最後の命令を受けて頷いたマリーダさんの力強い瞳が忘れられません。
それを見て静かに引き金から指を離すコンロイさんのカットも実に心憎い!!。
 
そんなやり取りを見て怒りを露わにするアンジェロ。
フロンタルへの狂気に満ちた陶酔っぷりと共に人を超えた力を賛美するのだが、バナージは「人の未来は…人が作るものだろ」と否定する。
 
「人は弱くて、不完全で、だから託すんだ!」
「託されて歩き続けるんだ。どんなに辛い道であっても」
様々な考え方を持つ人々との出会いと別れを経て導き出したバナージのこの台詞を聞いた瞬間、episode1からの物語が頭の中を駆け巡りました。
1つ1つが彼自身の経験に裏打ちされた生の言葉であり、口先だけの理想論とは違う確かな重みを感じます。
 
安定と引き換えに可能性の芽を摘み取ろうとするフロンタルと、不確定だが可能性に満ちた未来を選んだバナージ。
最終決戦に向け出撃するフルアーマーユニコーンの姿とオットー艦長による艦内放送によってクルーの意思は1つに纏まり未来を勝ち取る戦いが始まります!!。
 
ダミーデコイで攪乱を試みたリゼルジェガンを蹴散らしネェル・アーガマに迫るリディのバンシィ・ノルン。
それに相対するバナージのフルアーマーユニコーン
宇宙空間に輝く一筋の閃光と共にepisode6は幕を下ろし、本編の音楽を担当する澤野弘之さんが作詞作曲を手掛けたAimerさんの歌う「RE:I AM」が流れスタッフロールへ…。
この曲は3回サビが来るのですが、その度に曲調が壮大にそして力強く変化し物語の余韻を高めてくれます。
 
レウルーラで整備されていた"脚のない"謎の新型機など、原作小説とは違う展開を予感させるシリーズ完結編
episode7 「虹の彼方に」
は2014年・春公開予定。
圧倒的な物量で60分という既存の尺を超える事がアナウンスされているFinal episodeの完成を今はただ首を長くして待つばかりです。