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機動戦士ガンダムUC episode7 「虹の彼方に」

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episode7 「虹の彼方に」

 
■脚本 むとうやすゆき ■絵コンテ 古橋一浩村瀬修功・玄馬宣彦 ■演出 佐藤照雄・初見浩一
作画監督 恩田尚之・寺岡厳・菱沼義仁・荒木信二郎柴田淳中村誠一仲盛文・高谷浩利・津野田勝敏・城前龍治 ■エフェクト作画監督 SNIPES・佐藤敬
 
袂を分かったネェル・アーガマと袖付きの戦闘が激化する中、「ラプラスの箱」を求め「インドストリアル7」を目指すバナージの前にリディの駆るバンシィ・ノルンが立ちはだかる。
力に飲まれバナージの説得を頑なに拒み続けるリディだったが、マリーダのとったある行動によってその呪縛から開放される。
 
全てを闇に葬ろうとするマーサとローナン議長が連邦軍を動かしコロニーレーザーの発射準備を進める中、始まりの地「ビスト邸」へとたどり着いたバナージとオードリーは、そこで宗主サイアム・ビストと邂逅し「ラプラスの箱」を託されるのだが、それをよしとしないフル・フロンタルが現れ彼らに異を唱える。
 
足掛け4年。制作期間を含めればそれ以上の時間が掛かっている『ガンダムUC』も遂に完結。
舞台はバナージとオードリーの出会い地「インダストリアル7」に戻り「ラプラスの箱」を巡る最後の戦いが繰り広げられます。
 
率直な感想としては、これまでのシリーズに比べ展開が矢継ぎ早でやや忙しない印象を受けました。
episode4同様マイナーMSの活躍に時間を割く一方、リディの心情描写不足で言動が支離滅裂になっていたり、アンジェロがフロンタルに心酔するに至った経緯も触れられずじまいだったりとペース配分にも違和感があります。
マリーダさんに関しても「心に従った」結果とはいえ、お父さん(ジンネマン)との約束をあっさり破ってしまったのは残念。
ここはもう1つドラマが欲しかった。
 
遂に明かされた「ラプラスの箱」の正体。
これには「そんな物か?」と思う人もいるでしょうが(事実オットー艦長は「たったそれだけ事」と発言します)、どんな超兵器が飛び出すよりも宇宙世紀という世界では意味のある物なのだと思います。
未来をよくしようという「願い」が結果として「呪い」になってしまう皮肉。
これはシリーズ通して描かれてきたテーマでもあり私は大いに納得できました。
 
世界の結末を知り絶望したが故にその中で最善の妥協案を選択するフル・フロンタルと、そんな諦めてしまった大人に代わって可能性を信じ「それでも」と抗い続けるバナージ・リンクス
両者が激突するユニコーンガンダムVSネオ・ジオング戦は「RX-0」「UNICORN」「MAD-NAG」といった劇中BGMをメドレー形式で流しつつ超高密度な映像で展開し度肝を抜かれます。
ギミック満載のネオ・ジオングが発生させた「力場」の影響で実弾・ビーム兵器が破壊され殴り合い(MSでだが)にもつれ込むのも主義や主張の衝突を具現化しているようで面白い。
 
そしてバナージとフロンタルが宇宙世紀を駆け抜け虚無に至るまでのスペクタクル映像(BGMが「ビギニング」のアレンジというのがまた良い!)や、あの2人が登場する演出は監督自身「『ガンダム』ではなく『イデオン』的になってしまったかも」とコメントしており賛否が分かれそうですが個人的には宇宙世紀100年の節目に相応しい物だったと思います。

クライマックスのコロニーレーザーをサイコフィールドで防ぐ描写は『逆襲のシャア』のクライマックスに勝るとも劣らない奇跡が描かれ、「虹の彼方に」というサブタイトルを体現した神秘的な映像も感動を呼ぶ。
途中まで覚醒したバナージがアムロやシャアのように消えてしまうのではと心配したのですが戻ってきてくれて本当に良かった。
あとはカミーユみたいなってない事を祈るばかりです。
 
それにしてもアルベルトは何でローナン議長が発射ボタンを押した後に「リディ少尉がいるんだ!!」とカミングアウトしたのでしょう?。
ここだけはどうしても納得行きません。
あと何気にアンジェロも生きていましたが、大佐のいない世界に1人残されるなんて死ぬより辛いでしょうね。
むしろ後追い自殺しなかったのに驚きです。
もしや「逆襲のアンジェロ」への伏線か?。

前代未聞の延長戦となったepisode7。
ラストとあって総力戦で挑んだ圧倒的な映像クオリティはさすがの一言。
マリーダとの別れに涙を流すジンネマン、自分のした事に悶え苦しむリディ、別れ際アルベルトに一瞥するマーサなど、細かな芝居付けも本当に素晴らしい。
 
キャスト陣の演技も極まっており、中でも故・永井一郎さんが演じたサイアム・ビストの「もう我々の時代ではない。子供たちに託すべき時が来た」という台詞は1stガンダムでナレーションを担当していた永井さんが発するからこその重みがあり心に響きます。
失うことで出会ったジンネマンとマリーダさん、親が遺した負債を背負わされたオードリー、家柄・血筋に縛られ苦悩したリディ、そして可能性という希望を託されたバナージ。
それぞれの「親と子」の物語に決着をつけると共に、宇宙世紀の総括的な意味合いも込められたとても見応えがあるドラマでした。
 
最後に制作に関わった全てのスタッフ・キャストの皆々様。
本当に本当にお疲れ様でした!。