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『TIME/タイム』(2011年) -★★★☆☆-

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スタッフ&キャスト

原題: IN TIME
製作: 2011年 アメリ
時間: 109分
監督: アンドリュー・ニコル  
脚本: アンドリュー・ニコル
音楽: クレイグ・アームストロング   
出演: ジャスティン・ティンバーレイク(ウィル・サラス)
    アマンダ・セイフライド(シルビア・ワイス)
    アレックス・ペティファー(フォーティス)
    キリアン・マーフィ(レイモンド・レオン)
    ヴィンセント・カーシーザー(フィリップ・ワイス)
    マット・ボマー(ヘンリー・ハミルトン)
    オリヴィア・ワイルド(レイチェル・サラス)

あらすじ

科学技術が進歩したことにより老化現象を解決した近未来、25歳で生体の成長が止まると余命はあと1年という社会が構築されていた。
富裕層は寿命を気にしなくていい一方、貧しい人々は寿命を延ばすためにあくせく働き続けなければならなかった。貧しい青年のウィル(ジャスティン・ティンバーレイク)は、時間と引き換えに裕福な男性を殺した容疑を掛けられ、追われる身となってしまい…。

予告映像

感想

雁首揃えて同じ事を垂れ流すメディアに辟易したのでレンタルした『タイム』を観る。
貴重な時間を浪費している今日という日には実に相応しい映画だ。
 
そう遠くない未来、遺伝子操作によって人々の成長は25歳で止まり、替わりに其処から先の「時間」「通貨」とし未来を「買う」社会が形成されていた。
裕福な人間は永遠とも言える時を生き、貧しき人々は1分1秒の延命の為、身を粉にして働く。
まさに「タイム・イズ・マネー」を地で行く作品である。 
  
物語はそんな世界の最底辺の貧困街に生きる主人公が、ある富豪から1世紀分の時間と共に世界の真実を聞かされた所から始まる。
母を死に追いやった体制を憎み搾取された時間を取り戻すべく戦いを始めるのですがハッキリ言ってその部分は何の意外性もありません。
大富豪の娘をさらって、何時の間に彼女でデキちゃって、最後は一緒に反抗するというのは実に在り来たりな展開だし、あれだけ念押ししていた主人公の父親の伏線が完全に無視された上、キリアン・マーフィ演じるうっかりタイムキーパーも掘り下げ不足でお世辞にも纏まりが良いとは言えません。
 
しかし劇中の社会・人間風刺の数々はそれを補って余りあるくらいに秀逸。
例えば日本人が自殺する理由の殆どはある国で必死に生きる人々にすれば贅沢な悩みな訳で、そういった事が冒頭の主人公と富豪の会話で間接的に描かれます。 
 
その一方で主人公が貧しい人々に富の分配を図ろうとした結果、彼らの価値観を崩壊させ逆に不幸にしてしまう点も実にリアル。
宝くじが当たって人生が滅茶苦茶になるように、突然大金を手にしたら多くの人間は堕落したりトラブルに巻き込まれるに違いありません。
 
最終的に主人公が破壊しようとする社会システムにしても贅沢を知った人間が貧しい生活に戻れないように、何れまた誰かが富を独占しようと同じ社会を構築すると皮肉たっぷりに語られる始末。
 
随所にグサリと刺さる棘が散りばめられていて「面白い」というよりは「興味深い」
既得権益にしがみ付く者達だけが「時」を独占し、彼らの私腹を肥やす為に「物価」=「税金」がドンドン上がり庶民が苦しむという構図はまさに現代社会そのもので、この手の映画が受けない日本で本作がヒットしたのもそういった部分に共感する人が多かったからかもしれません。
(少なくともヘタクソ演技で吹き替え版を台無しにした某アイドルグループのメンバーの力でない事は確かです)
 
ツッコミ所は多い物の観終わった時
「自分は1分1秒無駄にしていないか?」
そう考えさせられるだけのテーマ性を持った作品でした。