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『おおかみこどもの雨と雪』(2012年) -★★☆☆☆-

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製作: 2012年 日本
時間: 117
原作: 細田守
監督: 細田守
脚本: 細田守 、奥寺佐渡
音楽: 高木正勝
出演: 宮崎あおい(花)
   大沢たかお(彼)
   黒木華(雪(少女期))
   西井幸人(雨(少年期))
   大野百花(雪(幼年期))
   加部亜門(雨(幼年期))
   林原めぐみ(草平の母)
   中村正(細川)
   大木民夫(山岡)
   片岡富枝(韮崎のおばさん)
   平岡拓真(草平)
   染谷将太(田辺先生)
   谷村美月(土肥の奥さん)
   麻生久美子(堀田の奥さん)
   菅原文太(韮崎)

あらすじ

"おおかみおとこ"と出会い恋に落ちた花はやがて雪と雨という"おおかみこども"の姉弟を出産する。
裕福ではないが幸せな日々を送っていた4人の家族。
だが別れは突然訪れる。
残された花は女手一つで雪と雨を育てるため人目を避けるように山奥へと移り住み家族3人の新たな生活をスタートさせる。
ボロボロだった家を修理し、近所の人々から田舎暮らしのコツを教わり奮闘する花。
そんな苦労を知ってか知らずか子供たちは野山を駆け回りながらスクスクと成長し、やがて「人」と「狼」どちらとして生きるか選択の時がやってくる…。

予告映像

感想

一般向け作品としては今現在スタジオジブリに対抗出来る唯一のネームバリューを持っている細田守監督の最新作。
予告などは子供向けのファミリームービーといった感じで宣伝してますが、実は大人に向けて作られたおとぎ話的な色合いの強い作品です。
少なくともお子様が理解出来るテーマではないので、これから子供連れて観に行こうとしている人は要注意。
 
今までの様な短い期間(ひと夏の出来事とか)を描いた作品と違い出産から旅立ちまでの十数年間を2時間という短時間で描く為、全ての要素があっさりしていて個人的には「勿体ないな」と感じました。
特にツンデレな爺さんが花を気にかけた理由や、山で出会った師匠と雨の交流なんかが省略されていた点はガッカリです。
 
そもそもこの作品は誰の視点で描きたかったのでしょう?。
母親である花が自分たちをどうやって育てたのか雪が回想している様に見えますが、かなり混乱します。
そして2人が女性である所為か男の子である雨の視点が終始欠落していたように思えてなりません。
いきなり使命感に目覚め「山を守る」と言い出してもこっちは「は?」って感じです。
別れのシーンも今までの日々を振り返る事もなく、あっさりと行ってしまい私は感動出来ませんでした。
 
そして花は笑顔で雨を見送りましたが雪はその事をどう思ったのか?。
私はそれが知りたかった。
不思議な境遇に生まれた世界でただ一人の姉弟なのに喧嘩別れのまま。
タイトルが「雨と雪」なのにこれで良いのか?。
山に行けば何時でも会えますが、落とし所としてどうにもスッキリしません。
 
子供作っといてよく解らない死に方をした「おおかみおとこ」や、雨を助ける為とはいえ豪雨の中土石流諸々の危険がある山に入っていく無謀な「花」、自分を大切に思っている母親がそういった行動に出る事すら予測しなかった「雨」など登場人物の行動に疑問も多い。
更に言えば子供2人を育てながらあれだけ働く花が筋肉も付かず色白で細いままというのも違和感があります。
萌えアニメならそういった変化はタブーですが本作の様な作品であればそういった部分も描けたのではないか?。
これも勿体ないと思います。
 
犬を飼っている者としてはかまってくれずに悪戯する雪の姿に「あるある」と思ったり、シリカゲル食べて(実際に家の犬は食った事ある)小児科と動物病院どちらに連れてくか悩むシーンで爆笑したり、DASH村よろしく廃屋直して畑作って近所の人たちと交流するのどかな田舎生活といった観ていて楽しくなるシーンも沢山あるのですが、トータルで見ると納得行かない事の方が多かった。
 
「狼の子供」という特異な設定はありつつも、タイムトラベルを交えた青春群像や世界の命運を掛けた電脳戦といった今までの細田作品に比べエンターテイメント性は低く、ともすれば地味である事は確か。
ただ日本の美しい自然とその中で育っていく命の輝き、テーマである「子育て」といった要素に感銘を受ける人たちであれば深く共感できると思います。
(要するに賛否がバッサリ分かれる作品という事)
 
それと話題の的である芸能人キャストに関しては大きな違和感はなかったです。
まぁ「そんな小声じゃこの距離でコミュニケーション取れねえよ!!」と思う場面は幾つかありましたがね…。
けど幼少期の雪を演じた子役の子は御世辞抜きに上手かった!。
彼女の溢れんばかりの喜怒哀楽の演技で作品の完成度が上がった事は間違いありません。