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『マルドゥック・スクランブル -圧縮-』 -★☆☆☆☆-

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     少女と敵と武器。魂の再生の物語。  
製作: 2010年 日本
時間: 65分
監督: 工藤進 
原作: 冲方丁 
脚本: 冲方丁
音楽: コーニッシュ 
声の出演:
     林原めぐみ(ルーン=バロット)
    八嶋智人(ウフコック=ペンティーノ)
    東地宏樹(ドクター・イースター
    中井和哉(シェル=セプティノス)
    磯部勉(ディムズデイル=ボイルド)
    田中正彦(ウェルダン・ザ・プッシーハンド)
    若本規夫(ミディアム・ザ・フィンガーネイル)
    かないみか(レア・ザ・ヘア)
    三宅健太(ミンチ・ザ・ウィンク)
    脇知弘(フレッシュ・ザ・パイク)

あらすじ

海辺の工業都市マルドゥック・シティ。
  
この街で未成年娼婦として日々を生き繋いできたルーン・バロットはある時カジノ経営者の富豪シェルによってその人生を買い取られる。
「なぜ、私なのか?」
そんな疑問を問いかけるバロット。
しかしそれはシェルが課した
「与えられたものに疑問を持つな」
という唯一のルールを破る事を意味していた。
 
約束を守れなかった罰として車ごと爆破されるバロット。
燃え盛る炎の中「生きたい」と願う彼女を救い出したのは委任事件担当捜査官のドクター・イースターとウフコックだった。
犯罪組織と繋がりを持つシェルの動向を探っていた彼等は封印された技術を用い証人を保護する緊急法令「マルドゥック・スクランブル-09」を適用しバロットを蘇生させる…。
 
果たして目覚めた彼女を待ち受けるのは幸福な日々か、それとも希望のない絶望の日々なのか?。
これは「少女と敵と武器。魂の再生の物語」…。

予告映像

感想

ライトノベルからアニメ・マンガ・ゲームの原案・脚本まで幅広くこなし、昨年発表した時代小説『天地明察』で本屋大賞を受賞するなど多岐に渡って活躍する冲方丁さんが2003年に発表した代表作『マルドゥック・スクランブル』が紆余曲折を乗り越えて遂に映像化されました。
 
かつてGONZOによって企画されたOVA版から主演の林原めぐみさんを除いて製作会社・スタッフ共に一新された今回の劇場版。
原作通り三部作構成となっており脚本を冲方さん自らが執筆するなど原作ファン垂涎のオリジナルを尊重した作りとなっています。
 
私自身は原作小説を未読の為これが初『マルドゥック・スクランブル』だったのですが、かなり濃い内容と情報量に終始圧倒されっぱなしでした。
なんというか色々と生々しい描写や今の御時世だとヤバイんじゃね?と感じる設定も散見していて、かなり刺激的。
一応レーティングではPG-12となってますが分別の無い人間には見せない方が良いのは確か。
往年の川尻善昭作品や梅津泰臣作品に通じる血生臭いバイオレンス描写も相まって観る人間を非常に選びそうです。
 
辛い過去の出来事と向き合い戦う事を余儀なくされる主人公ルーン=バロットを演じるのは我らが林原めぐみさん。
今敏監督の『パプリカ』以来の主演作なる今回、「綾波レイに匹敵するのでは?」と思える程に複雑な内面を持ったバロットというキャラクターを見事に体現しています。
本人は時代の流れもあってOVA企画が頓挫した時点で「自分がバロットを演じる事はもうないだろう」と思っていたそうですが、若手声優にこの難解なキャラクターは荷が重すぎるでしょう。
 
一方本作のメインキャスト中で唯一のタレントキャストであるウフコック役の八嶋智人さんも善戦していましたが、私はウフコックが喋る度に八嶋さんの顔が浮かんでしまい終始「う~ん」て感じでした。
下手ではないのですが「何故この配役」という疑問は最後まで無くならなかった。
原作を読んでると違うのだろうか?。
 
あと気になるのは若本さんが何時も通り自を出し過ぎた演技をしていた事くらいでしょう。
ちょい役なんですが登場シーンで笑いを堪えるのが大変でした(苦笑)。
 
全体的に大作テイストではないですがB級映画サイバーパンク物が好きな人は楽しめると思います。
少なくとも映画が始まってから本田美奈子さんの『アメイジンググレイス』が流れるエンディングまでテンポ良く進むので飽きる事はないかと…。
ただエログロに耐性の無い潔癖症な方は鑑賞前に覚悟を決めて下さい。
 
個人的にプロット面に不満はなかったのですが、映像面の作り込みの甘さが目に付いたので評価は2つ星。
具体的に言うと日常シーンは問題ないのですが、動きのあるシーンの作画が崩壊気味だった事。
それとスタッフにノウハウがないのかアクションシーンの見せ方が悪く、とにかく状況が解り辛かったというのが理由です。
正直私が「カッコイイ!!」と思えるシーン・印象に残るシーンは全編通して皆無でした。
 
その辺りの部分が来年公開予定の「燃焼」で改善される事を願います。