旧いまここにあるもの

Yahoo!ブログ時代のアーカイブ。記事内のリンクが上手く機能しなかったり、タイトルが文字化けしたり、画像のアスペクト比が可笑しいのはダメダメな移行機能の所為。新ブログはこちら→https://imakokoniarumono.hatenablog.com/

『スカイ・クロラ』 ★★★☆☆

イメージ 1

原題 THE SKY CRAWLERS
製作 2008年 日本
時間 121分
監督 押井守
原作 森博嗣
脚本 伊藤ちひろ
音楽 川井憲次
声の出演
   菊地凛子草薙水素
  加瀬亮函南優一)
  谷原章介(土岐野尚文)
  山口愛(草薙瑞季
  平川大輔(湯田川亜伊豆・合原)
  竹若拓磨(篠田虚雪)
  麦人(山極麦朗)
   大塚芳忠(本田)
  安藤麻吹(フーコ)
  兵藤まこ(クスミ)
  ひし美ゆり子(ユリ)
  竹中直人(マスター)
  榊原良子(笹倉永久)
  栗山千明(三ツ矢碧)

あらすじ

世界は平和を実感する為に"ショーとしての戦争"を行っていた。
そこに身を投じるのは"キルドレ"と呼ばれる若者たち。
彼等は戦闘機に乗り空で死ぬまで年を取らず生き続ける。

女性指揮官・草薙水素の基地に赴任してきたパイロットの函南優一。
不思議と優一は水素に惹かれるものを感じ。水素もまた優一にある感情を抱いていた…。

感想

今作で押井監督は色々な意味で自身のセオリーを覆した。
それは脚本を初めて仕事をする人に委ねた事だったり、上映時間を2時間と長くしたり、メインキャストに俳優を起用した事だったりする。

人の内面を描くというよりは情景とセリフで間接的に人らしきモノを描いてきた押井監督。
今までの氏の作品がとことんドライだったのに対して、この『スカイ・クロラ』はウエット感がある。
生々しいというか、ドロッとした感じの…。

そんな人間模様を演じるキャラクター達の立ち振る舞いや仕草等の日常芝居の作画は細かくリアル。
だが西尾鉄也さんのデザインしたキャラクター達は皆アニメ的かつ人形の様で浮世離れしている感が否めない。
勿論、意図的なものなのだが、どうにも違和感が先に来てしまい圧倒的な情報量とフルCGで描かれる「空」のシークエンスと、極力線を省いたシンプルかつアニメ的なキャラクター達の「地上」での描写のギャップは最後まで埋まらなかった。
人狼』位のキャラデザであればしっくり来たと思うのだが、『NARUTO』のアニメ・オリジナル・ストーリーに出て来そうな面々だったのはちょっと…(苦笑)。

まぁ押井さん曰く「情報量の多い絵を動かせるアニメーターが極端に少ない」と言った理由等もあるのだろう。
攻殻機動隊2.0』の時も「このレベル(当時の『攻殻機動隊』)のアニメは今は作れない」と断言していたし…。

それでも「空」と「地上」のアンバランスさが観ていてどうしても辛い。
先も述べたが、背景・作画・音楽、全てが緻密で「実写的」であったのに対して、キャラクターただ一点のみが「アニメ的」なモノなのだ。
この情報量の極端な違いがどうしようもない違和感となって襲い掛かって来た。
アニオタの私がこう感じるのだから一般人はもっとキツイと思う…。

この違いこそ「希望と絶望」「閉塞感と開放感」「生きることと死ぬこと」等の相反する事象を「空=CG」と「地上=手描きアニメ」で対比して描いた本作の特徴でもあり狙いでもあるのですが、いやはや慣れんでしたわ(笑)。
インタビューで監督が「若い人に向けて作った」と仰っていたが、凝り固まった観方しか出来ない私はもう年なのかな…(笑)


まぁとにかく本作の目玉である空中戦の出来は素晴らしく(ややゲームっぽいが)、特に最後の何処までも広がる雲海の中で繰り広げられる一対一の空中戦は短いながらも凄まじいの一言!!。
これぞ日本が世界に誇るアニメの、ハリウッドすら模倣する空中戦だと胸を張れる出来栄えです。

そして意外にも合っていた?俳優キャスティング。
メイン2人は微妙ですが谷原くんと千明ちゃんは初挑戦にしては上手過ぎでした(笑)。

押井監督が『スカイクロラ』で挑んだ新境地を経て、今後どのようなカタチの作品を生み出すのか、今から楽しみで仕方ありません。