スタッフ&キャスト
あらすじ
2013年8月。
太平洋の海底に開いた「時空の裂け目」から出現した巨大生物「Kaiju」がサンフランシスコを襲撃。
軍を総動員し必至の抵抗を試みるも、その進行を止めるまでに6日間を要してしまう。
それ以降も世界各国に「Kaiju」が現れ被害は拡大。
人類存亡の危機を前に人々は争う事を止め、手を取り合い、巨大人型兵器「イェーガー」を建造。
それによって十数年間「Kaiju」の侵攻を封じ込める事に成功する。
だがより攻撃的に進化していく「Kaiju」を前に一機また一機と「イェーガー」が破壊され、残存機体は4体にまで減少し人類は劣勢に立たされる。
そんな中、PPDC(環太平洋防衛軍)は大本である「時空の裂け目」を破壊する作戦を立案。
予告映像
感想
更に批評家から絶賛され各国で映画賞を獲得したダーク・ファンタジー『パンズ・ラビリンス』など、独特のビジュアルセンスで高い評価を受けるガチオタ監督ギレルモ・デル・トロが巨額の制作費を投じて作り上げた怪獣と巨大ロボットが戦う公私混同・趣味丸出し映画『パシフィック・リム』を観賞。
いやホントよくもまぁこんな企画をワーナーブラザースは通したと思いますよ(苦笑)。
毎度作品のPRで来日する度「秋葉原」や「中野ブロードウェイ」でスーツケース何個分もフィギュアを纏め買いしていくギレルモ・デル・トロ監督が幼少の頃から慣れ親しんだ日本カルチャーへの愛をこれでもかと注ぎ込んだ作品とあって観ていて悪い気はしないし、むしろ「ありがとう」と感謝したくなる。
しかし、そういった感情を切り離し客観的に観るとこの作品は、あくまで「オタクが作ったオタク映画」でありオタク的な感性を持ってないとあまり感動しないかもしれません。
各所で「怪獣映画」的に宣伝されてますが「怪獣映画」と言っても「初代ゴジラ」や「平成ガメラシリーズ」の様なリアリティーを追及した物ではなく、ゴジラが様々な相手と怪獣プロレスを繰り広げた「昭和ゴジラシリーズ」や「ウルトラマンシリーズ」なんかをイメージした方が正しいでしょう。
周りの風景はあたかもミニチュアである事が前提であるかのように処理されており、逃げ惑う人間の存在=目線が不在なため巨体感も希薄でスケールが大きいのにそれに見合った迫力が感じられない。
CGに頼り切った破壊映像もカタルシスが感じられず、巨大ロボットと怪獣がろくな武器も使わず取っ組み合いの殴り合いを繰り広げるのも、お世辞にも今の時代に見合ったビジュアルとは言い難いです。
もっとも監督はその辺り確信犯的にやっている様で、「イェーガー」と呼ばれるロボットのデザインも『鉄人28号』など古き良きロボット像を具現化しており、怪獣にしてもデザインする上でのコンセプトが「中に人が入れる形」だったそうで本当に徹底しいます。
ただ戦闘シーンの見せ方に関しては『トランスフォーマー』などと同じで矢継ぎ早に展開する為ひとつひとつのアクションが印象に残らず、緩急の付け方が上手いとは言い難い。
せっかく「ロケットパンチ」を使ったのに、それも次から次に展開するアクションシーンの中に埋もれてしまい実に惜しい。
ストーリーや設定も大味で
「そもそもなぜイェーガーでなければ怪獣に対抗出来ないのか?」
といった根本的な説明が欠落している。
更に怪獣の出現理由や、その裏に居た黒幕。
最後のオチなんかは『インデペンデンス・デイ』でホント「えっ?」て感じです。
出演者に関しては、これだけの大作であるにも関わらず集客が見込めるドル箱スターを起用しなかったのには驚かされる。
戦うヒロインに大抜擢された菊池凛子嬢は男所帯の中、紅一点頑張ってたけど所々披露する日本語が何故か片言だった(苦笑)。
あと誰が売り込んだのか本作でハリウッドデビューを果たした芦田愛菜ちゃんは終始泣きっぱなしだったけど存在感ありました。
天才子役として今後お呼びが掛かるかも?。
いろいろと書いてきましたが今までのギレルモ・デル・トロ作品の中では一番キャッチーで抜群に観易い事は確か。
毎度お馴染みグロテスクな表現だったり、生理的に嫌悪感を抱くクリーチャーなんかも不在で、オタク趣味を内包していますがきちんと大衆向けに作られています。
多くの部分が大味で完成度が高いとは口が裂けても言えませんが、そういった所には目を瞑って映像に集中するのが本作を楽しむ上での正しい作法でしょう。
私は手近な上映回がなく字幕版で観ましたが作風的には吹き替え版の方が楽しめると思います。