旧いまここにあるもの

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『旧劇場版』を観て『新劇場版』の結末を想う。

魔が差して(笑)『旧劇場版』を観返しました。
いや~何度観ても凄い映画ですわ。

『新劇場版』では人との繋がりを描いているのとは対照的に、他人を否定し全てを無に帰す『旧劇場版』の終幕感漂う展開はとても同じ人が作ったとは思えません。

物語終盤に個体生命としての形を保つためのA.T.フィールドがアンチA.T.フィールドによって無効化され人々が原始の姿(LCL)に還元されていく中流れる印象深い挿入歌「Komm, süsser Tod ~甘き死よ、来たれ~」
この曲は庵野さんの書いた原詩。そしてそれを英語にした英詩。その英詩を日本語に訳した英詩意訳の三つがありどれも興味深い詩となってます。

↓の動画に英詩と英詩意訳が表示されています。


↓そしてこれが庵野さんの手掛けた原詩です。
不安なの。
不安なの。
みんなに嫌われるのが、怖い。
自分が傷つくのが、怖い。
でも、ヒトを傷つけるのが、もっと怖い。
でも、傷つけてしまう。
好きなヒトを傷つけてしまう。
だから、ヒトを好きにならない。
だから、自分を傷つけるの。

嫌いだから。
だいっキライだから。

好きになっては、いけないの。
だから、自分を傷つける。

優しさはとても残酷
心を委ねたら、私は壊れてしまう
心が触れ合えば、あの人は傷つく

だから、私は壊れるしかない
無へと還るしかない

無へと還ろう
無へと還ろう
それは、優しさに満ち満ちたところ
そこは、真実の痛みのないところ
心の揺らぎのないところ

無へと還ろう
無へと還ろう
無へと還ろう
無へと還ろう(リピート)

大分内容が変わっていますが、どれも破滅的で悲しい内容です。

英詩訳を観れば「私」は庵野さんで「あなた」がファン「世界」はエヴァという作品なのでは?と読み取れますし、一方の原詩ではシンジの心情と庵野さん自身の心情がリンクしている様にも感じます。

当時のエヴァは熱狂的なブームになったと同時に批判的な人も相当数いました。
最終回に納得出来ないファンはGAINAXの建物にスプレーで落書きをし、ネット掲示板ではアンチによる誹謗中傷の書き込みで大変な事になっていたと聞きます。

純粋にアニメが好きで皆に喜んで貰おうと作品を作り上げた庵野さんの精神は、切迫した制作現場での肉体的疲労も相まって相当追い詰められていた事でしょう。
「こんな苦しいのならば全てを終わらせてしまおう…」
それこそが『旧劇場版』の『エヴァ』だったのだと思います。

一度は全ての他人を否定したシンジが、傷つく事を承知の上で他人を受け入れる僅かな希望もありますが、その後シンジは再びアスカを殺そうとしてしまいます。
そんな矛盾も含めて『旧劇場版』は当時の庵野さんそのものなのだと思います。

そして月日が流れ2006年秋。
あれだけ苦しんだ庵野さんが『エヴァ』を再び作ると聞いた時、私は『旧劇場版』の様にはならないという確信が心の何処かにあり、実際公開された『新劇場版』はまだ途中ですがキャラクターが皆少しずつ強くなっていました。
僅かな変化ですが『エヴァ』の中では革新的な事でフィルムからは庵野さんの精神が安定している事が窺えると同時に前向きな気持ちも伝わって来ます。

次の『Q』から先どうなるかは庵野さん自身まだ思案中らしいのですが支えてくれる奥様や心強い仲間。
そして待っていてくれるファンがいれば、きっと素晴らしいラストを迎えてくれると私は信じています!!。