一大ムーブメントを巻き起こした『踊る大捜査線』から近年はアニメ業界に籍を移し『PSYCHO-PASS サイコパス』などを手掛けている本広克行監督がメガホンをとり、同氏が所属するプロダクションI.Gと東宝が連名で制作した実写版『亜人』。
CVを宮野真守さんが務めたIBMのCGをポリゴン・ピクチュアズが手掛けたり、音楽も引き続き菅野祐悟さんが担当するなど、アニメ版のスタッフ・キャストがそのまま参加したハイブリッドな布陣が面白い。
随所でアニメ版のイメージが流用される一方、大人の事情でビルの倒壊に変更された飛行機による突入シーンは原作通り再現されていたのが興味深い。
普通実写版の方がこういうところは日和ると思うのだが、なかなかどうして英断である。
配役に関しては原作より年齢を上げた永井、その反対に若返った佐藤と、この辺りは賛否あるだろうが、前者は媒体の違いを考えれば納得が行くし、後者は単純に演じられる人がいないのだから仕方ない。
ただ実写版佐藤の演技がアニメ版で同役を務めた大塚芳忠さんの怪演に当てられ全体的にオーバーアクトとなっているのが残念でならない。
ともすれば滑稽でギャグに片足を突っ込んでおり、その辺りもっと自然体で演じても良かったのではないか?。
原作の要点を抽出し導入部からラストまでスピーディーに再構築したストーリーは取捨選択の妙と潔さもあって好感が持てるのだが、ウケ狙いのオリジナル要素はところどころ目障りで、特に某You tuberの登場は時代を反映したと言えば聞こえは良いがお寒い事この上無く、「こんなところに時間を割くなら、もっと原作のキャラを登場させろ!!」と思うファンは多いだろう。
他にも身体を切り刻まれてるのに永井に巻かれた包帯が綺麗だったり、血生臭い人体実験を繰り返している施設や職員の制服が新品同様ピッカピカ、銃撃戦を繰り広げたのに壁に弾痕の後が残らなければリセットで身体を撃っても該当箇所の衣服に穴が開かないなど、細かな作り込みの粗さが全体のクオリティを下げてしまっている。
スタッフは「こんなところ」と思って省略したのだろうが「そういうところ」を作り込む事でフィクション然とした物語に説得力が生まれるのではないか?。
演者の肉体改造を含む並々ならぬ努力や、アクションの質の高さなど優れている部分もあるが、全体的に詰めの甘さが目立つ仕上がりで、原作にある友情や葛藤といったドラマが極端に端折られているので、そこを期待すると肩透かしを食らうこと請け合い。
良くも悪くもアクション主体でサクッと見れるアトラクションムービーとして捉えるのが正解で、そこを見誤らなければ109分退屈することはないだろう。