そもそも原作は堀越さんの自伝ではなく『モデルグラフィックス』という模型雑誌に宮崎さんが連載していた漫画であるという点を留意したい。
そんな原作を映画化するにあたって飛行機のエンジン音や地鳴りといった一部の効果音をあえて人の声で収録したり、タレントキャスティングを越えた衝撃の素人キャスティングを敢行するなど、暴挙とも言える試みをしているのも本作のポイント。
普通のプロデューサーなら止めると思うのだが、まったくもってジブリという会社は不思議なところである。
開始早々、明らかに人の声で「ぶぅ~ん」「ごうんごうん」「ぶるるるるるるぅ~」と不自然な擬音が聞こえてくるのだが、これはこれで「実験」としてはありだし、子供が飛行機のおもちゃで遊ぶ感覚と堀越の純粋な飛行機愛を掛けた演出だと思えば納得できる。
しかし『新世紀エヴァンゲリオン』の生みの親にして宮崎監督の弟子にあたる庵野秀明さんを主演声優に起用したのは誰得としか言いようがない。
最初にこの話を聞いた時は「新手の嫌がらせか?」と思ったのですが、案の定棒読みで私はチラチラ庵野さんの顔が浮かんでしまいました(苦笑)。
上記のような気になる部分が散見するものの、そこは巨匠・宮崎駿。
主人公の飛行機にかける情熱と共に監督の趣味が垣間見える細かな飛行機の描写、時代に翻弄され不本意ながら戦闘機を作る男と彼を慕い続けた病弱な女性の悲恋。
一部で「戦争を賛美している」とか「タバコを吸うシーンが多すぎる」などと頭の可笑しい連中が頭の可笑しい批判をしていましたが、これを観て他に思う事はないのかね?。