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日曜洋画劇場で放送された『GOEMON』を観た。

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極彩色の色彩や時代考証を無視した世界観によって時代劇を一種のファンタジーとして成立させた異色作『GOEMON』が番組タイトルとは裏腹に邦画もイケてしまう「日曜洋画劇場」で地上波初放送されたので早速鑑賞。
 
監督の紀里谷和明さんと言えば長編デビュー作『CASSHERN』が興行的には十分成功したものの酷評され失敗作のレッテルを貼られてしまいましたが、私としてはアクションの描き方が全く出来ていなかった点を除けば実に先鋭的な映像作りをした面白い作品だったと思っています。
そりゃハリウッドの大作映画に比べれば映像は破綻しまくりだし、合成は違和感バリバリ。
正直言えば観れた物じゃないシーンも多々ありました。
しかし
「出来ないからやらない」
のではなく
「出来る範囲で精一杯やる」
という作り手の姿勢に私はいたく感銘を受けたのです。
少なくともTVドラマで十分な物語を映画媒体で製作し金を搾取する昨今の邦画に比べればよっぽど健全でした。
 
そんな邦画界の風雲児・紀里谷和明さんが2本目に手掛けたのがこの『GOEMON』な訳ですが、観終わって瞬間私は「全ての面において『CASSHERN』の方が完成度が高かったな」と感じてしまいました。
 
地上波放送は時間の都合でカットされまくっている事は重々承知ですが、その事を差し引いたとしても脚本の出来がとにかく酷い!!。
最初から最後まで乱暴で慌ただしく起承転結なんてあったもんじゃない。
まるで出来の悪い総集編を見せされた気分です。
自由を求めた結果周りを不幸にして最後は自己犠牲で平和を訴える五右衛門の行動も、アメリカ人は喜びそうですが私はカッコイイとは思えませんでした。
「強くなれば大切な人守れる」とか言っておきながら自分は親友を含め殆どの人間を見殺にするとか何なの?って感じ。
最後の特攻だってただの独りよがりの自己陶酔にしか見えなかった。
 
それと最初に出て来た貧困街の子供は絶対伏線だと思ったのに完全スルーとかどういう事でしょう?。
五右衛門の意思を継ぐとかそういった描写にしないなら同じ境遇で登場させた意味が解りません。
 
映像に関しても紀里谷監督の理想が1人走りし、それに技術が全く追い付いていません。
現実離れしたアクションをやるのは結構ですが、其処に最低限のリアリティー(重量感など)を盛り込まなければただの荒唐無稽なアクションでしかない。
更に言えばこういったシーンは大量に盛り込んでも各々の印象が薄れるだけなので最低限に留めるべきであり、それが資金的・技術的に余裕が無い作品なら尚の事そうするべきです。
数を絞ればクオリティの底上げにもなっただろうしカタルシスだって生まれた筈。
完成度の低いアクションを場繋ぎ的に見せる事が観客の為だと思っているのならば考えを改めるべきです。
 
とにかくこの映画あらゆる部分が破綻しまくりで観ていて非常に辛かった。
個人的に紀里谷監督の映像センスはテリー・ギリアムティム・バートンみたいな作家性を出した作品の方がハマると思うので、次回作は是非そういった方向性でやって頂きたいと思います。