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『劇場版 PSYCHO-PASS サイコパス』(2015年) -★★★☆☆-

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製作: 2014年 日本
時間: 113分
監督: 塩谷直義
音楽: 菅野祐悟
声の出演:
    野島健児(宜野座伸元)
    佐倉綾音(霜月美佳)
    伊藤静(六合塚弥生)
    櫻井孝宏(雛河翔)
    沢城みゆき(唐之杜志恩)
    東地宏樹(須郷徹平)
    山路和弘(雑賀譲二)
    日高のり子(ドミネーター)
    神谷浩史(ニコラス・ウォン)
    石塚運昇(デスモンド・ルタガンダ)

あらすじ

ある日、重火器で武装した不法入国者のグループが公安に逮捕される。
彼らは警備の盲点を熟知しており、その脳内記憶にはかつて公安局に在籍した執行官・狡噛慎也の姿が残されていた。
やがて犯人たちが内戦の続く東南アジア連合「SEAUn(シーアン)」からやって来た事が判明。
常守朱狡噛の参与を確かめるべく国外捜査を申請、日本から輸出された「シビュラシステム」を導入したシーアンの管理特区「シャンバラフロート」に向かうのだった…。

予告映像

感想

ノイタミナ枠で放送され人気を博した『サイコパス』待望の劇場版。
続き物なので予備知識は必須ですが取り敢えずTVシリーズ第一期をチェックしていれば楽しむ事が出来ます。
時系列的には第二期の後になるのですが、そちらの要素は一係の新メンバーくらいなので観なくても問題ありません。
個人的には「カムイキリト」や「集団的サイコパス」も話に絡めて欲しかったのですが、この辺は同時進行で制作されたり脚本家が違う影響でしょうね。
 
今回シリーズで初めて日本以外の国にスポットが当たるのですが、地球上で「平和」と呼べる状態を維持しているのは日本だけで、それ以外の国々は内乱や紛争による飢餓や貧困で酷い事になっている模様。
そんな混沌とした世界で日本が文字通り「平和(シビュラシステム)」の輸出を始めるという構図は現実世界のいろいろな事象と合わせて考えると興味深いものがあります。
ここでふと「どうして世界がこんな状態になってしまったのか?」という疑問が浮かぶのですが、詳細については語られずモヤモヤした気持ちが残る。
劇中の日本ではシビュラの意向によって歴史の授業が行われていないそうなので、この機会に是非とも言及して欲しかった。
 
映像面に関しては「劇場版」を名乗るだけあって申し分ないクオリティとなっており、常守のセクシーショットから、筋肉増し増しでよりワイルドになった狡噛、ちょびポニテが可愛い横恋慕な宜野座さんなど男女ともに美形度アップ。
 
上記メインキャラが見せ場を含め優遇される一方、サブ&ゲストキャラの扱いは全体的に雑でニコラスは結末を含め小者すぎて拍子抜け。
宜野座さんを除く一係の面々や個性豊かな傭兵部隊にももうちょい活躍の場を用意してほしかった。
唯一の癒しを提供してくれた、お下げのメイドちゃんにしても色々と不憫すぎて…。
聞けば初稿段階でおばちゃんだったのをわざわざお兄ちゃん想いの美少女に変更したそうなのですが、それをああいう目に遭わせるなんてスタッフは鬼か!!。
 
観る前は『イノセンス』のように国内で起きた事件が異国での捜査に発展~その過程で想い人と再会するという展開を予想していたのですが、思いの外トントン拍子に話が進んでビックリ。
元々劇場版はTVシリーズ=日本国内では出来ない要素を盛り込もうというスローガンがあったそうで、重火器やパワードスーツによる激しい銃撃戦からシラットでの1対1~1対複数人の変則ファイトなど全編に渡って派手なアクションが展開するハリウッド映画的な作風に仕上がっていました
 
静と動の使い分けが素晴らしい常守と狡噛の再会シーンから、あのキャラのカメオ出演、そしてクライマックスの胸熱な共闘などファンなら楽しめる事請け合い。
スケール感を含め満足できる内容になっているのですが「この正義に、最後の引き金を―」というキャッチコピーから予想された「完結編」的な要素はなく、良くも悪くも「番外編」止まり。
シビュラは人々を支配する偽りの神か?、はたまた正しき方向に導く救いの神なのか?。
シリーズ通して描かれてきたテーマに決着はつかず、填島のカリスマ性を受け継いだ狡噛と彼を想う常守の関係にも進展があったとは言い難いので、近い将来続編が制作されるでしょう。
 
ちなみに本作はレーティングで「R-15」に指定されていますが表現自体はTV版と大差ありません。
確かにエルミネーターで人肉ミンチになった時のモツのディティールはアップしていますが、シチュエーション的なエグさはTV版の方が断然上でした。