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『LOOPER/ルーパー』(2012年) -★★★☆☆-

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スタッフ&キャスト

原題: LOOPER
製作: 2012年 アメリ
時間: 118分
監督: ライアン・ジョンソン  
脚本: ライアン・ジョンソン
音楽: ネイサン・ジョンソン 
出演: ジョセフ・ゴードン=レヴィット(ヤング・ジョー)
    ブルース・ウィリス(オールド・ジョー)
    エミリー・ブラント(サラ)
    ポール・ダノ(セス)
    ノア・セガン(キッド・ブルー)
    パイパー・ペラーボ(スージー
    ジェフ・ダニエルズ(エイブ)
    ピアース・ガニォン(シド)
    シュイ・チン(オールド・ジョーの妻)
    ギャレット・ディラハント(ジェシー

予告映像

感想

批評家から絶賛され米国内で数多くの映画賞にノミネートされるなど高い評価を得た、 『インセプション』のジョセフ・ゴードン=レヴィットVS『ダイ・ハード』のブルース・ウィリス共演の話題作『LOOPER/ルーパー』を鑑賞。
 
時は西暦2044年
タイムマシンが実用化された30年後の未来から送られて来るターゲットを始末する「ルーパー」と呼ばれる裏稼業で生計を立てるジョセフ・ゴードン=レヴィット演じる主人公・ジョーは、ある日転送されて来た未来の自分(ブルース・ウィルス)を殺し損ねた事から組織に追われる身となります。
 
各所でネタにされていますが、30年後の自分がハゲていたのがショックで撃てなかったと思われても仕方ない初対面シーンが妙に笑える。
顔の作りからしジョセフ・ゴードン=レヴィットブルース・ウィルスになるのは無理があるような気がするのだが、『フェイス/オフ』のニコラス・ケイジジョン・トラボルタよろしく映画なのだから仕方あるまい。
 
そんな訳で初っ端から盛大なタイムパラドックスが発生するのですが、本作はスタートした時点で既にタイムマシンによる過去改変が行われているので何が起こっても不思議ではありません。
これ以外にも多くの矛盾が存在しており既に「今」と「未来」の関係性が崩れ始めているように感じます。
 
未来から来たジョーも言ってしまえばパラレルワールドの住人なのだが同一人物である事に変わりないので、若い方のジョーが「傷」を負えば年老いたジョーにも同じ場所に「古傷」が浮かび上がり、体験した出来事は過去の記憶として共有されるなど一種の縛りが存在する。
このギミックをさり気無く説明する"見せない事でエグさを際立てる"拷問シークエンスや、それを踏まえた上で展開する2人のジョーの駆け引きなどは見応えがあります。
 
未来の自分を殺して事態を収拾したいジョーと、過去を変え愛する人を取り戻したいジョー。
ハリウッド映画のセオリーで行けば最終的にそんな2人が協力して巨悪を叩いてハッピーエンドとなるのだが、本作はそんな簡単な話ではありません。
要するに未来で極悪人となる「レインメーカー」と呼ばれる人物が今の時代ではまだ善にも悪にも染まっていないのだ。
 
過去の自分と重ね愛情があれば悪の道には進まないと主張するジョーと、自分がここに存在している以上その未来は変わっていないと信じているジョー。
可能性の芽を摘む事で得る平和に価値があるのか?。
はたまた可能性を信じ多くを犠牲にするリスクを冒すのか?。
究極の自問自答とも言える対立構造が興味深い。
 
ラストは思い掛けない方向に向かい、これをどう捉えるかで賛否が分かれるのですが、良くも悪くも「愛は人を変える」というメッセージが強く打ち出されており考えさせられます。
 
この監督の作品を観るのは初めてだったのですが、スタイリッシュな映像や一風変わったカメラワーク。
洒落た小道具など随所にセンスを感じる。
なにやら日本のサブカルチャーにも精通しているようで本作を制作する上で大友克洋さんの作品を手本にしたのだとか?。
言われてみれば"あのキャラクター"は『童夢』で、"あのシーン"なんかは完全に『AKIRA』だ。
他にも『カウボーイビバップ』の「レッド・アイ」を彷彿とさせる目薬式のドラッグなど、マンガ・アニメ好きはニヤリとさせられる事請け合い。
 
予告やキャッチコピーを真に受けると捻りの効いたストーリーに肩透かしを喰らいますが、なかなか興味深いSF映画でした。