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『外事警察 その男に騙されるな』(2012年) -★★★☆☆-

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スタッフ&キャスト

製作: 2012年 日本
時間: 128分
原作: 麻生幾
監督: 堀切園健太郎  
脚本: 古沢良太
音楽:
梅林茂 
出演:
渡部篤郎(住本健司)
    キム・ガンウ(安民鉄)
    真木よう子(奥田果織)
    尾野真千子(松澤陽菜)
    田中泯(徐昌義)
    イム・ヒョンジュン(奥田正秀/金正秀(韓国名))
    北見敏之(金沢)
    滝藤賢一(久野)
    渋川清彦(森永)
    山本浩司(大友)
    豊嶋花(琴美)

予告映像

感想

渡部篤郎さんが『ケイゾク』の真山徹以来のはまり役と言われる『外事警察』の劇場版を鑑賞。
TVシリーズは未見ですが特に混乱する事もなく楽しめました。
 
例によって禁止ワードらしく本編では一度も出てこない(と記憶している)北朝鮮からウランが流出したという情報がCIAからもたらされる。
時を同じくして東日本大震災で被災した大学から軍事転用可能な技術情報が記録されたHDDが何者かによって盗み出されていた事が発覚。
事態を重く見た公安部は外事課の住本健司率いるチームに工作員と目される貿易会社の内偵を指示するのだが、在日二世の核技術者や韓国の諜報部NISを巻き込みながら事態は思わぬ方向に展開していく。
 
日本のCIAと呼ばれる外事課にスポットを当て、タイムリーな社会情勢の中で核によるテロの脅威を描きだす、日本映画らしからぬ骨太な作品。
「公安の魔物」と呼ばれ目的の為には手段を選ばない主人公・住本健司は民間人を抱き込み自身の手駒として利用する。
息をするかのように嘘を吐き、相手の過去や人間関係を洗い浚い調べ上げ弱みを握るその姿は「正義」とは程遠く感じる。

このキャラクターの一番怖い所はストイックなまでに感情を表に出さない点にある。
いや正確に言えば感情は出す。しかしそのどれもが相手を騙す上辺だけのもので本当の自分を決して見せようとしない。
仕事に対する情熱。国を守ろうという愛国心大義をなそうという義務感。
どれも彼の本質ではないように思えてくる。
劇中ある人物に「あんたこそ何を守ってるんだ?」と問われるのだが私も同じ事を感じた。
 
日本と韓国を股に掛け展開する諜報戦。互いを利用し合う巧みな心理戦。
重厚な映像や音楽、鬼気迫る役者の演技など最初から最後まで緊張感が途切れる事はない。

「その男に騙されるな」という副題通り、ラストで住本健司は観客を含め全員を騙し煙に巻く。
正直な話、このフェイクには途中で気付いていたが、ここまで堂々とやられると見事としか言いようがない。
登場人物の中で誰が一番くせ者で腹黒かと言えば間違いなく主人公の住本健司だろう。
「公安の魔物」という通り名も納得の恐ろしいキャラクターである。