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『とある飛空士への追憶』(2011) -★☆☆☆☆-

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製作: 2011年 日本
時間: 99分
原作: 犬村小六
監督: 宍戸淳
脚本: 奥寺佐渡
音楽: 浜口史郎
出演: 神木隆之介(狩乃・シャルル)
    竹富聖花(ファナ・デル・モラル)
    小野大輔(カルロ)
     富澤たけし(千々石武夫)

あらすじ

巨大瀑布が横たわる中央海を挟み神聖レヴァーム皇国と帝政天ツ上の両国は常に激しい戦闘を展開していた。
そんな中、レヴァーム皇国の飛空士シャルルは、次期皇妃ファナを水上偵察機に乗せ敵の制空権を突破し婚約者のカルロ皇子のもとへ送り届けるという極秘にして重大な任務を任される。

予告映像

感想

犬村小六さんによる同名ライトノベルマッドハウスが映像化。
キャラクターデザインを手掛けた松原秀典さんの絵柄が『ヱヴァ新劇場版』の影響で貞本義行さんテイストになっているのは御愛嬌です。
(ちなみに某学園都市を舞台にした作品とは無関係なのでご注意ください)
 
物語自体は、最底辺から叩き上げでエースパイロットにまで上り詰めた主人公が政略結婚によって嫁ぐ事になった次期王妃を敵の哨戒網を潜り抜け本国まで送り届けるという実にシンプルな物。
その中で身分違いの2人の恋を交えたドラマや、激しい空戦が描かれて行く訳ですが、正直言ってどれもパッとしません。
 
そもそもこの手の2人舞台的な作品でその主演2人がプロではないというのが非常に問題。
時をかける少女』や『サマーウォーズ』など賑やかな作品であればたどたどしい演技も許容出来るが、シリアスな演技を要求されるこの手の作品では致命的。
波の音だけが流れる夜の海での会話など本来であれば聴き入るべきシチュエーションなのに観ているこっちはどんどん冷めて行く。

敵軍のエースパイロットを演じたサンドウィッチマンの富澤さんが寡黙なキャラクターという利点はある物の堂に入った演技をしていたのに対し、神木・竹富両名は完全なるミスキャスト。
これは本人たちの努力云々ではなく配役担当者の任命責任だ。
 
ストーリーに関してもこれ程シンプルなプロットなんだから2人の心情をもっと丁寧に描写すべきだったと思う。
このキャスティングでは行間の部分を補う声の名演技は期待できないのだから、書き手がもっと工夫すべきだろう。
海峡を切り裂く巨大瀑布が存在するファンタジックな世界観ももう少し生かして欲しかった。
 
そして作品の見所となるべき飛空挺や戦闘機による戦闘シーンも重量感や迫力が不足し見所足り得ていない。
巨大艦艇が軽々と舵を切り、呆気なく轟沈するんで『風の谷のナウシカ』や『LAST EXILE』に比べえらい淡泊。
最後のドッグファイトにしても『スカイクロラ』を知っていると画面構成が貧相で挙動も不自然、映画のクライマックスにしてはパンチが弱過ぎた。
 
今回指摘した点は原作だと恐らく(というか間違いなく)丁寧に描かれているのだろうが、この映画版は全てに置いて中途半端という印象。
主人公とヒロインの物語はミスキャストで台無し。空戦にしても拘りが感じられずカタルシスもない。原作ファンはさぞ失望している事だろう。
鑑賞前から薄々感じていたが、映画館で観る価値があるとは到底思えない残念な出来だった。