episode3 「ラプラスの亡霊」
■脚本 むとうやすゆき ■コンテ 古橋一浩・玄馬宣彦 ■演出 佐藤照雄・遠藤広隆
だがそれは「ラプラスの箱」の在り処を探るべくフロンタルが仕組んだ罠だった。自分のした事に責任を感じ塞ぎ込むバナージ。
戦闘が主なる物と思われたepisode3ですが、蓋を開けてみればサブキャラクターが輝いた回だった様に思います。
そして台詞回しも実にガンダムらしかった!!。
物語スタートと同時に始まる資源衛星パラオ攻略戦。
「ビリヤード作戦」という名の通りエコーズの手引きによって分離した岩塊をハイパーメガ粒子砲で押し出し軍港を塞ぐという宇宙空間ならではの出鱈目な作戦が圧倒的な迫力で描かれて行きます。
この混乱に乗じてオードリーと共に地球を目指すリディ少尉。
出撃間際にその姿を目撃したミコットが思いの外、大人の対応をして私は驚きました。
正直、一悶着あると思っていたのでね…。
デルタプラスで戦闘に割って入り、相手の武器だけを破壊し
「それで言い訳つくだろ!!、帰っちまえ!!」
と吐き捨てる辺りリディ少尉は根っからのMSパイロットだなと…(笑)。
バナージもバナージで年上相手に
「男と見込んだ。オードリーを頼みます」
とは、さすが宇宙世紀の主人公である(笑)。
(ちなみにここはリディ少尉のリアクションを含め婦女子の妄想ポイントですww)。
戦闘を終わらせたいというバナージの言い分が結局は連邦の理屈でしかないと斬って捨てるマリーダに
「違う、違うよマリーダさん!。あなたたちは直線的すぎるんだ!!」
「この…わからず屋!!」
とガンダム台詞のオンパレードで反論するバナージに私のニヤニヤが止まりません。
一方マリーダを捨て駒扱いするフロンタルに御立腹なジンネマン。
2人の間に軋轢が生じ始めコレが後の伏線になっていく分けですね。
ただこのシークエンスepisode2からの作画流用が目立ったのが残念。
TVアニメならまだしもせっかくのOVAなのだから其処は新規作画でやって欲しかった…。
原作読者はどう描くか心配で仕方なかったであろうマリーダさんの過去ですが、私としては上手い事処理していたと思います。
全体の流れを殺さない様、抽象的な表現に留める事でエグさを和らげつつ想像力を掻き立てる演出が御見事。
ハサン先生の報告書を読んで顔を顰めるオットー艦長と同じ女性として辛そうな副長のリアクションも良いアクセントになっていました。
不可抗力とは言えマリーダを負傷させ責任を感じるバナージに再びユニコーンに乗る様に命じるダグザさん。
高圧的な態度でバナージを突き放す物の、その直後廊下を歩きながら部下のコンロイに
「自分に息子でも居れば、とうに味わっていた気分なのかとも思ってな」
と漏らす姿に私はグッと来ました。
短いながらも彼が仕事以外に取り得の無い不器用な人間だという事がひしひしと伝わって来る印象深い台詞であり、
ここから「大人と子供」ひいては「父と子」という構図がダグザさんとバナージの関係性に集約し描かれて行きます。
無能かと思われたオットー艦長も実は有能な人物で、冷静な分析能力を発揮し副長に驚かれるシーンは爆笑物。
照れて帽子を目深に被り直す仕草とか萌えてまうわ!!ww。
他にも紅茶という洒落た趣味(ここの描写は拘りが凄い!!)を持っていたり、バナージにそれとなくダグザさんの本心を諭したりと良い味を出しています。
何気に『UC』の登場人物の中でこの人が一番好きかもしれません。
敵を殺さない様に戦うバナージに怒りを露わにするダグザさん。
それに
「遊びなもんか!!」
「自分が死ぬのも、人が死ぬのも冗談じゃないって思うから、やれる事をやってるんでしょ!!」
と言い返すバナージにまたしてもガンダムらしさを感じる。
自分を連邦の歯車と既定し続けたダグザさんが最後に見せた責任の果たし方は格好良いの一言。
ユニコーンのエンブレムが描かれたバナージの胸元(心臓であり心)を指さし
「ここが知っている」
「自分で自分を決められるたった1つの部品だ、なくすなよ」
とか名言過ぎるよダグザさん!!。
この台詞で口調が一気に優しくなるもんだから私の涙腺は…。
マリーダと同じく「NT-Dシステム」が持つ別の可能性を示唆し、バナージに自らの希望を託す姿はまるで本当の父親の様でした。彼等の想いを一身に受けバナージがどう選択し成長していくのか今後の展開が楽しみです。
エンディングはシリーズで初めて本編映像に被せる形でスタート。
テーマソングはPVとの相性はいまひとつでしたがこの本編を踏まえた上で聴けば作品と上手くリンクしていたのではないでしょうか?。