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『REDLINE』 -★★★☆☆-

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製作: 2010年 日本
時間: 102分
原作: 石井克人
監督: 小池健   
脚本: 石井克人榎戸洋司櫻井圭記
音楽: ジェイムス下地  
声の出演
    木村拓哉(JP)
    蒼井優(ソノシー)
    浅野忠信(フリスビー)
    我修院達也(リンチマン)
    津田寛治(トラヴァ)
    AKEMI(ボスボス)
    岡田義徳(ジョニーボーヤ)
    森下能幸(シンカイ)
    青野武(もぐらオヤジ)
    石塚運昇ボルトン大佐)
    石井康嗣(マシンヘッド鉄二)
    堀内賢雄(タイタン国防長官)
    廣田行生(ロボワールド大統領)
    三宅健太(デイズナ弟)
    チョー(イヌキ組長)

あらすじ

遠い遠いはるか未来。
宇宙最速の座を賭けた5年に1度の祭典「REDLINE」の季節が今年もやってくる。
 
とある事情から親友のメカニックマン・フリスビーと共に八百長レースに手を染め生計を立てているJPの下に、ひょんな事からこの「REDLINE」への出場資格が転がり込む。
制止するフリスビーを余所にJPはマスコミに向け意気揚々と出場を宣言するのだが、今年の開催地は軍事国家が統治する宇宙で最も危険な惑星ロボワールドだった…。

予告映像

感想

製作期間7年。作画枚数10万枚。
CG全盛のこの時代に、あえて全編手描きによる表現に拘り作り上げられた長編アニメーション映画『REDLINE』。
 
人物はともかく何故マシンまで手描きにする必要があったのか?、等と言う野暮な疑問を持つ人は予告映像を観て下さい。
加速し歪む車体、意図的にパースを狂わせ描かれたフォルム、それらは全て杓子定規なCGでは不可能な表現であり手描きによるアニメーションならではの味なのです。
例えばCGで描かれたロボットと手描きで描かれたロボットでは、手描きで描かれたロボットの方が印象的なシーンが圧倒的に多く感じると思うのですが、それは空間的な嘘が付ける分見栄えの良い理想のポージングが可能だからに他なりません。
 
私自身年間通して様々なアニメを観ているのですが、この『REDLINE』は近年作られた劇場用アニメーションの中で最も野心的で刺激的な映像が炸裂していると断言出来ます。
時代錯誤と言われればそれまでですが、日本が誇る手描きアニメーションの真髄が感じる意味でも一見の価値はあります。
 
さて本作ではメインキャラクターの声優に近年流行りのタレント陣が起用されているのですが、この作品に関しては皆予想以上に健闘しており個人的には「有り」だと感じました。
特にヒロインのソノシー役を演じた蒼井優ちゃんは『鉄コン筋クリート』の時も思いましたが、とにかく上手い!!。
このまま声優業でもやってイケるのでは?と思わせる位に安定感を見せており、フリスビー役の浅野忠信くんも良い意味で普段通りのスタンスで演技していてGood!!。
一番心配だったキムタクも『ハウルの動く城』での棒読み演技が何だったのかと思う程にJPというキャラクターを生き生きと演じており、かなりの嵌り役だった様に思います。
大御所声優さん達とも見事に渡り合っており、彼等の所為で作品の質を落とすなんて事は全くありませんでした。
 
それより問題なのはむしろ作品の構成面であり、前半から中盤にかけての乗りは満点をあげたい位にテンポが良いのですが、中盤からダレてしまい最後の着地点ももう少しやりようがあったのでは?と思ってしまいました。
というのもクライマックスのレースで軍事国家の妨害に端を発する衛星兵器・巨大生物兵器といった規格外の要素を盛り込んでしまったが為に宇宙最速を目指すライバル達によるレースの駆け引きがおざなりになってしまっているのです。
本来であればその部分に作品の魅力が凝縮され、映画のカタルシスに繋がる筈だったのに実に惜しい!!。
 
ラストシーンもスピード感を損なわないという理由で、ああいった終わり方になったのだと思いますが個人的にはもう少しレースの余韻や出場者のその後など描いても良かったと思います。
(ロボワールド首脳陣のその後とかねww)
どうにも後半が乱雑になった印象でもう少し整理し上映時間を後10分増やしていれば傑作になっていた様に感じるだけに残念でなりません。
 
構成面にやや不満は残るものの、手描きアニメーションの魅力を改めて感じ102分間実に有意義な時間を過ごす事が出来ました。
今の御時世、これだけの作品を手描きで作る事は容易な事ではなく本作も完成した事自体が奇跡だとは思いますが、今後もこういった作り手の情熱が感じられるアニメーションを作り続けて頂きたいと1アニメファンとして強く願っております。