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ニール・ブロムカンプ監督作 『第9地区』(2009年) -★★★★☆-

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スタッフ&キャスト

原題: DISTRICT 9
製作: 2009年 アメリカ/ニュージーランド
時間: 111分
監督: ニール・ブロムカンプ 
脚本: ニール・ブロムカンプ 、テリー・タッチェル 
音楽: クリントン・ショーター 
出演:
シャールト・コプリー(ヴィカス)
    デヴィッド・ジェームズ(クーバス大佐)
    ジェイソン・コープ(グレイ・ブラッドナム/クリストファー・ジョンソン)
    ヴァネッサ・ハイウッド(タニア)
    ナタリー・ボルト(-)
    シルヴァン・ストライク(-)
    ジョン・サムナー(-)
    ウィリアム・アレン・ヤング(-)
    グレッグ・メルヴィル=スミス(-)
    ニック・ブレイク(-)
    ケネス・ンコースィ(-)

あらすじ

南アフリカ共和国ヨハネスブルク上空に突如姿を現した宇宙船。
だが人類初となる異星人とのコンタクトは映画の様なドラマチックな物ではなかった。
母船が故障し行き場を無くした"彼等"を政府は「難民」として地上の隔離区画「第9地区」に受け入れる事を決定し、不安を募らせる地域住民の意思を無視し半ば強引に移住生活をスタートさせてしまう…。
 
それから28年の時が流れた現在。
この地域を管理する超国家機関MNUによってスラム化が進行し犯罪の温床と化した「第9地区」の撤去と、そこに住まう彼等を整備されたより安全な居住区へと移住させる作業が今まさに始まろうとしていた…。

予告映像

感想

未だかつて宇宙人を難民として描いた作品があっただろうか?。
いや探せばあるのかもしれないが、こういった形で映像化した作品を観るのは私は初めてだった。
 
恐ろしくリアルなドキュメンタリーシーンで幕を開ける本作。
御調子者な癖に弱腰という典型的なヘタレ人間であるヴィカスは「第9地区」から宇宙人達を新たに整備された「第10地区」へ移送する計画を任される。
宇宙人たちを虫けら程度にしか考えていないヴィカスは強制的に移送作業を進めて行くのだが、その最中謎の液体を浴びてしまい…。
 
さて、ここからがこの映画の面白い所。
見るからにヤバイ液体を浴びたヴィカスがなんと宇宙人に変身してしまうのだ!!。
(予告でも映ってるからネタバレじゃない)
DNAロックが掛かっている宇宙人の武器を兵器に転用したい権力者達にしてみれば、そんなヴィカスは正に生きた標本だから、さぁ~大変。
其処から始まる人権などお構いなしの実験の数々。
今まで蔑んできた対象に自分自身がなる事で見えてくる人間の醜悪さ。
辛くも研究施設を逃げ出したヴィカスが身を寄せる事が出来るのは迫害してきた宇宙人達で溢れかえる「第9地区」だけというのがまた滑稽である。
 
そんな同族に追われるヴィカスに手を差し伸べたのは純粋で義理堅い宇宙人というのも実に皮肉。
最初は主人公同様「この宇宙人たち気持ち悪いな~」と感じるだろうが、物語が進むにつれ彼等の事が愛おしくなってくること請け合い。
 
最終的には戦争映画顔負けの血みどろ戦闘シーンへと突入していくのだが、これがまた良い意味でB級テイスト満載で非常に良い!!。
特に宇宙人の兵器で悪漢どもが水風船の様に弾け飛ぶシーンなんて正にB級!!。
ここまでやられるとグロいというより、むしろ爽快。
予告映像に出てくるパワードスーツもアイアンマンなんかより断然好み。
しかもミサイルでプチ板野サーカスかましたり監督さてはオタクだな?。
 
何より恐ろしいのは欲に目が眩んだ人類であり、宇宙人になる事でその事実と向き合ったダメダメな主人公が今までの行いを改め善き人への一歩を踏み出すクライマックスの展開にはグッときました。
(ラストの「花」がすごく良い!!)
正直、綺麗事だらけの『アバター』なんかよりも、この映画の方がよっぽど印象深いです。
 
「難民問題」「人種差別」果ては「大量虐殺」や「人体実験」といった人間同士で描くと重く倫理的にも問題となりそうなテーマを宇宙人に置き換える事でエンターテインメントへと昇華させ、同時に観る人々への問題提起も打ち出す事に成功した『第9地区』は近年稀に見る傑作だと私は思います。
万人向けとは行きませんが硬派な作品が好きな方は観て損はないでしょう。