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『メッセージ』(2016年) -★★★☆☆-

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スタッフ&キャスト

原題: Arrival
時間: 116分
製作: 2016年 アメリ
出演 エイミー・アダムス(ルイーズ・バンクス)
    ジェレミー・レナー(イアン・ドネリー)
    フォレスト・ウィテカー(ウェバー大佐)
    マイケル・スタールバーグ(ハルパーン捜査官)
    マーク・オブライエン(マークス大尉)
    ツィ・マー(シャン将軍)

あらすじ

ある日、突如として地球上に降り立った巨大な球体型宇宙船。言語学者のルイーズは、謎の知的生命体との意思疎通をはかる役目を担うこととなり、“彼ら”が人類に何を伝えようとしているのかを探っていくのだが…

予告映像

感想

テッド・チャン著『あなたの人生の物語』を実写化したドゥニ・ヴィルヌーヴ監督の『メッセージ』をネットフリックスでは配信されてないので久し振りにレンタルを利用して鑑賞。

『インターステラー』と同じく「観終わった後に少し賢くなった気になる系SF」。などと書くと身も蓋もないのだが、エイリアン=侵略者という単純明快な宇宙大戦争ドンパチ映画が好きな人間には100%評価されない味わい深い作品である。

世界各国に突如として現れた12隻の飛行物体。
人々はそれを「殻」と呼び、内部に存在する生命体とのコンタクトを試みる。
果たして彼らの目的は人類との対話か?、はたまた地球の侵略なのか?。

本作は言語学者という役職にスポットを当て地球外知的生命体とのコミュニケーションを模索する過程を緻密に描いたという点で新鮮なものの、基本は学者たちの言葉(文字)の解読作業がメインなのでおよそスペクタクルと呼べるシーンは存在しない。
シチュエーションも代わり映えせず絵的にもこの上なく地味なのだが、その中で描かれるドラマが最終的に驚きと感動を呼び深い余韻を観た者に残す。

どうしようもなく愚かで野蛮な人類の性(さが)を批判しつつ、同時にそんな人々の中に希望を見い出すクライマックス。
スリードを用いた映像的演出もまた、それ自体が彼等がもたらす「贈り物」の伏線となっており、どこかテレンス・マリック作品を彷彿とさせる白昼夢のような「彼女とのパート」はことさらに美しく輝いていた。

劇中で触れられる「サピア=ウォーフの仮説」同様、観る前と後で世界の見え方が少し変わる不思議な作品。
タイトルは原題の『Arrival』や、邦題の『メッセージ』よりも、やはり原作小説の『Story of Your Life(あなたの人生の物語)』が作品の雰囲気に一番マッチしていると感じた。

ちなみに、作中日本にも「殻」が飛来するのだが、北海道に居た筈が終盤にはどういう訳か新宿上空に移動しており相変わらず適当な外国人の地理感覚にシリアスなシーンなのに笑ってしまいました(苦笑)。