本作はノイタミナで放送されたアニメ版も記憶に新しい三部けいさん原作の同名コミックの実写化作品なのですが、そもそもこの物語を時間の制約が大きい「映画」という媒体でやろうとしたことが間違いであり、例によって主要エピソードの継ぎ接ぎと登場人物の削減という荒業で2時間足らずの本編にコミック9巻分のボリュームを圧縮しているのだが、その結果多くの魅力がスポイルされ出来の悪いダイジェストのような仕上がりになっている。
取り分け悟の友人がケンヤのみに絞られた事で過去パートで展開するドラマ全般が弱くなり、キーキャラクターであるはずの「雛月加代」の存在が薄れてしまったのは痛い。
八代学を慕い同時に尊敬していたからこそ藤沼悟が怒りをぶつけるシーンや、敢えて原作やアニメと趣向を変えたという結末はそれはそれで悪く無いのだが、基本的な部分がこれでは話にならない。
頼みの綱である藤原竜也くんにしてもお約束の舞台染みた劇画演技が悟のキャラクターには合っておらず、その他の出演者(あの人の老け顔メイクにファンは絶叫したに違いない)も浮いている上、カメラワークを含めた演出が恐ろしくチープで映画的な豪華さは微塵も感じられなかった。
実写化権の争奪戦の末に出来上がった物がコレでは業界内でも納得できない人が多いようで、今秋よりスタッフ・キャストを一新した再実写版がNetflixで配信されるとの事。
作中と同じ真冬の北海道で撮影が行われるなど今回は本気で作っているようなので、この映画版を黒歴史として葬り去るような傑作の誕生に期待したい。