旧いまここにあるもの

Yahoo!ブログ時代のアーカイブ。記事内のリンクが上手く機能しなかったり、タイトルが文字化けしたり、画像のアスペクト比が可笑しいのはダメダメな移行機能の所為。新ブログはこちら→https://imakokoniarumono.hatenablog.com/

『エリジウム』(2013年) -★★☆☆☆-

イメージ 1

スタッフ&キャスト

原題: ELYSIUM
製作: 2013年 アメリ
時間: 109分
監督: ニール・ブロムカンプ
脚本: ニール・ブロムカンプ
音楽: ライアン・エイモン
出演: マット・デイモン(マックス・ダ・コスタ)
   ジョディ・フォスター(デラコート高官)
   シャールト・コプリー(クルーガー)
   アリシー・ブラガ(フレイ)
   ディエゴ・ルナ(フリオ)
   ワグネル・モウラ(スパイダー)
   ウィリアム・フィクトナー(ジョン・カーライル)
   ファラン・タヒール(パテル大臣)
   ブランドン・オーレ(ドレイク)
   ジョシュ・ブラッカー(クロウ)
   エマ・トレンブレイ(マチルダ
   ホセ・パブロ・カンティージョ(サンドロ)

あらすじ

2154年スペースコロニーエリジウム”で生活する富裕層はパーフェクトな居住空間で過ごす一方、荒廃した地球に暮らす貧困層はひどい搾取に苦しんでいた。エリジウム政府高官のローズ(ジョディ・フォスター)が地球の人間を消そうと動く中、地球で暮らすマックス(マット・デイモン)はエリジウムに潜入することを決意。
残り5日しかない寿命を懸けて戦いに挑む。

予告映像

感想

第9地区』で鮮烈なデビューを飾った新鋭ニール・ブロムカンプ監督のもとに、マット・デイモンジョディ・フォスター、ウィリアム・フィクナー、アリシー・ブラガ、そしてシャールト・コプリーといった名立たる役者陣が集結し、製作費も『第9地区』の3000万ドルから1億1500万ドルに大幅アップした正真正銘のSF大作『エリジウム』。
  
物語は宇宙に浮かぶスペースコロニーに移住し贅の限りを尽くす裕福層と、荒廃しきった地球に取り残され労働力として酷使される貧困層という究極の格差社会を下敷きに、全てを変える「ある物」を手に入れ追われる身となった余命いくばくもない主人公の戦いを描きます。
 
今もっとも新作が期待される監督が莫大な製作費とハリウッドスターを大量起用して作り上げた作品ですが、だからといって傑作が生まれるとは限らないのが映画の面白いところ。
むしろスケールが大きくなればなるほど周りの雑音が増え、やりたい事が出来なくなってしまうのがハリウッドであり、本作もご多聞に洩れずその洗礼を受けています。
 
シド・ミートが参加したデザイン面や独特のカメラワークなど細かな部分は素晴らしいのですが、肝心のストーリーがアレすぎて本当にもったいない。
 
とにかく主人公が強いんだか弱いんだかハッキリせず動機も不明瞭。
何がきっかけで更生したのか?、どうしてあそこまで生に執着するのか?。
そういった部分が掘り下げられないので感情移入できません。
 オマケ程度の幼少期のエピソードやヒロインとのロマンスも期待したほど膨らまず、自己保身が自己犠牲に変化する過程も省略されてしまいドラマとして全く盛り上がらなかった。
 
そもそもこの役、マット・デイモンが適任だったのだろうか?。
アクションスターとしてのイメージが定着している人物より、アクションとは無縁の役者がパワード・スーツを着用して戦った方が意外性があり面白かったのではないか?。
 
共演のジョディ・フォスターやウィリアム・フォクサーも、その名声とは不釣り合いなほど薄っぺらいキャラクターでハッキリ言って見せ場なし。
友情出演程度の活躍しかせず何の為に出て来たのか解りません。
 
唯一『第9地区』とは打って変わって冷酷非道な傭兵を演じたシャールト・コプリーの怪演が光っていましたが、言動が小者臭い上、相手がジェイソン・ボーンマット・デイモンなので負けるビジョンしか浮かばない(苦笑)。
もっと切れ味抜群のサムライソード(日本刀)や人肉ミンチ精製装置(手裏剣爆弾)を駆使して暴れ回って欲しかったのですが…。
 
そんでもって肝心要の結末も、現実世界で起きている問題を理想主義者の夢想で片付けるという暴挙を冒しており「これが本当に『第9地区』を作ったのと同じ監督か?」と悪い意味で驚かされました。
あんな事しても根本的な解決にならないし、新たな矛盾や争いが生まれるだけではないか?。
監督はそういった問題提起も含んだそうですが、その割に本編ではそういったリスクを指摘するセリフが一切出てこないのだから可笑しな話だ。
 
監督お得意の『dead space』ばりの人体欠損や、凝りっ凝りのミリタリー描写などは健在ながら、毒っけを含んだストーリーテリングはなりを潜め、すっかり「お利口」な話になってしまった。
これも大人の事情という奴でしょうか?。
 
次回作は『チャッピー(原題)』というヒュー・ジャックマン主演のコメディ作品で既に撮影が始まっているそうですが、そちらで挽回してくれる事を期待します。