前巻から続く現時点で最長エピソードである「八十神編」もこれにて完結。
今回は幽霊が現れると噂される湖畔に建つ洋館で起きた密室殺人事件の裏に隠された21年前の悲劇とコイルの関わりが明らかになるのですが、ミステリーor推理物の雰囲気が強かった前巻から徐々にSFへシフトしていく展開が面白い。
現実世界で起こった悲劇をきっかけに「ナンバーズ」のコイルによって生み出された「可能性の世界」が、今度は現実に干渉し最終的には自分自身を殺してしまうというパラドックス。
硬派なSFとして見ても面白いのですが、ダムという特異な構造物を用いた事件の概要や、ミステリー物のお約束である驚きの真実、そして背筋がゾクッとなる最後のオチなど密度の濃いエピソードでした。
何気にルーザーの関係者やマブチの過去を知る存在なども顔を見せシリーズのターニングポイントとしても機能しているような気がします。