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『ルート・アイリッシュ』(2010年) -★★★☆☆-

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スタッフ&キャスト

原題: ROUTE IRISH
製作: 2010年 イギリス/フランス/ベルギー/イタリア/スペイン
時間: 109分
監督: ケン・ローチ  
脚本: ポール・ラヴァーティ 
音楽: ジョージ・フェントン 
出演: マーク・ウォーマック(ファーガス)
    アンドレア・ロウ(レイチェル)
    ジョン・ビショップ(フランキー)
    トレヴァー・ウィリアムズ(ネルソン)
    ジェフ・ベル(ウォーカー)
    タリブ・ラスール(ハリム)
    クレイグ・ランドバーグ(クレイグ)
    ジャック・フォーチュン(へインズ)
    ナイワ・ニムリ(マリソル)

あらすじ

2003年3月に開戦したイラク戦争後、バグダッド空港と市内のアメリカ軍管理地域(グリーンゾーン)を結ぶ「ルート・アイリッシュ」は世界で最も危険な道路と呼ばれていた。
民間軍事会社の警備員として戦地に赴いていたファーガスは同僚で親友のフランキーがこの「ルート・アイリッシュ」で命を落とした事を知る。
会社の発表した死亡時の状況と態度に違和感を覚えるファーガス。
そして死んだフランキーから届けられた"ある証拠"によって、その疑いを確信に変えて行く…。

予告映像

感想

時たま重い映画が観たくなる。
本日は『麦の穂をゆらす風』の名匠ケン・ローチ監督がイラク戦争を題材に描いた『ルート・アイリッシュ』。
 
過剰な防衛行動による市民の殺傷
非合法な家宅捜索
尋問という名の暴行
ストレス発散と称した人間狩り
etc.
 
イラクで実際に行われていた戦争という状況に託けた犯罪行為と、戦争をビジネスにした利益至上主義の民間軍事会社を糾弾したサスペンス物。
兄弟同然に育った親友の死に所属するPMC(民間軍事会社)が関わっているのでは?、と疑い独自に調査を開始した主人公が周囲を巻き込みながら破滅的な結末に向かってひた走る。
 
本当に戦死だったのか?。それとも口封じで殺されたのか?。
 
自身もまた戦地でのトラウマを抱えた主人公は真実が見えない焦りから誤った判断を下してしまう。
明言はされていないが社会から孤立した主人公の暮らしっぷりやキレ易い描写などを見るに精神を病んでしまった帰還兵の問題なんかも組み込まれている様に思う。
 
理知的に行動せず最終的に暴力という手段に訴えてしまった結果、映画は救いようのない形で幕を下ろす。
力に対し力では何も解決しない。
残るのは空しさだけと言わんばかりだ。
そう、とにかく空しい。
 
戦争をビジネスにする者達によって翻弄された人々の悲劇。
劇中の時間軸とのズレからダイレクトにそのメッセージを感じ取るのは難しいかもしれないが、米国製反戦映画とは違う視点と切り口は興味深く、とても観応えがあった。