あらすじ
「大災禍」と呼ばれる大規模な混沌から復興し、その反動で極端な健康志向と調和を重んじる超高度医療社会が訪れた世界。
ある時、数千人規模の命が奪われる事件が発生し、その背後には、13年前、まやかしの社会に抵抗して自殺したはずの少女・御冷ミァハの影があった。
ミァハとともに自殺を試みるも失敗し、生き延びて戦場の平和維持活動に従事していた霧慧トァンは、ミァハの存在を確かめるため事件の捜査を開始する…。
予告映像
感想
『虐殺器官』公開記念で二週連続放送された「Project Itoh」の一篇『ハーモニー』を録画鑑賞。
健康と幸福、そして平等が約束され、同時に強制される究極の管理社会と化した近未来。
誰もが善行を進んで行い悪事を働かず、病を克服し長寿が実現した理想郷で起こった不可解な集団自死事件。
それを仕組んだと目されるグループは犯行声明で全ての人間に対し1週間以内に自分以外の誰かを手に掛けなければ自殺させると宣言する。
かつて惹かれ合い、ある事件によって別離したトァハとミァハの2人の関係を軸に描かれる「人間の在り方」の物語。
思いのほか娯楽色が強かった『屍者の帝国』と違い、派手なアクションシーンは冒頭のみで後はひたすら会話劇によって思考を巡る濃密な人間ドラマが紡がれていきます。
究極的に平等や健康を突き詰めた社会の息苦しさ。
そして人が欲望のままに生きる混沌が支配する外界の醜さ。
調和の取れた世界から連れ出され、二つの世界で生きる事を強制されたミァハがああいった結論に至った事を誰も責める事はできないし、不完全な人類はそうなる事が真の意味で幸福だったのかもしれない。