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デヴィッド・フィンチャー監督作品 『ベンジャミン・バトン ~数奇な人生~』 -★★★☆☆-

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スタッフ&キャスト

原題: THE CURIOUS CASE OF BENJAMIN BUTTON
製作: 2008年 アメリ
時間: 167分
音楽: アレクサンドル・デスプラ 
出演: ブラッド・ピット(ベンジャミン・バトン)
 ケイト・ブランシェット(デイジー
    ティルダ・スウィントン(エリザベス・アボット
    ジェイソン・フレミング(トーマス・バトン)
    イライアス・コティーズ(ガトー)
 ジュリア・オーモンド(キャロライン)
 エル・ファニング(デイジー(幼少期))
    タラジ・P・ヘンソン(クイニー)
    フォーン・A・チェンバーズ(ドロシー・ベイカー)
    ジョーアンナ・セイラー(キャロライン・バトン)
 マハーシャラルハズバズ・アリ(ティジー
    ジャレッド・ハリス(マイク船長)

あらすじ

巨大ハリケーンが近付くニューオリンズの病院に1人の老婆が入院していた。
彼女の名前はデイジー
デイジーは自らの死期が近い事を悟り見舞に来ていた娘に古びた日記を手渡し、自分の代わりにこれを読んで欲しいと告げる。
その日記の持ち主の名はベンジャミン・バトン。
これは80歳で生まれ、年をとるごとに若返っていく男の数奇な人生の物語…。

予告映像

 

感想

デヴィット・フィンチャーブラッド・ピットが3度目のタッグを組んだ『ベンジャミン・バトン ~数奇な人生~』。
重苦しい空気感と死の匂いが漂う『セブン』や、消費社会を糾弾し自己暴力へと走る『ファイト・クラブ』を生み出したコンビとは思えない程に美しい物語に仕上がっていて正直驚きました。
芸術的で何処か浮世離れしているという点では過去の作品に通じる所もありますが、本作からは今までにはない温かみを強く感じる事が出来ます。
  
「80歳の体で生まれ、年をとるごとに若返っていく」というフィクション然とした設定は下手をすると荒唐無稽になってしまうのですが、本作にはそう思わせないだけの説得力があります。
 
映像面では若返っていくブラピの変化を胡散臭さを感じさせず描き切った事が素晴らしく、お爺ちゃんブラピとか「ホントどう撮ったの?」と本気で思ってしまいます。
必然的に後半では実年齢よりも若いブラピがスクリーンに再臨する訳ですが、ここはファンならずとも「おお!!」と唸ってしまう事請け合い。
一方でケイト・ブランシェットを始めとする周りの人々は物語が進むにつれ老いていく訳ですが、こちらも非常にリアルに描かれているので必見!!。
アカデミー賞で「メイクアップ賞」と「視覚効果賞」を受賞したのも納得です。
 
そんな映像面での「外見」と打って変って脚本ではベンジャミンの「内面」が確りと描かれており上手くバランスが取れています。
生きていれば様々な悲しい出来事に直面し、間違った選択をして後悔するかもしれない。
けどそれ以上に、嬉しい事。楽しい事。素敵な出会いだってきっとある。
宣伝では「若返る男」と「老いていく女」のラブストーリーとしての面を強調していますが、本作はそういった事をひっくるめて「人生」という大きなテーマを描いています。
ベンジャミンが出会う人々が一様に優しく、苛めや差別といった描写が一切出て来ないのはリアリティという点では問題かもしれませんが、この作品は一種のファンタジーなので然程気にはならないでしょう。
言ってしまえば本作は「人生の素晴らしさを描いた大人のおとぎ話」なのです。
 
自分の運命を悲観せず、前向きにそして精一杯生きた主人公が残した「何かを始めるのに遅すぎることは何もない」という台詞。
映画を観終わった後、「人生は素晴らしい」と素直に感じる事が出来ました。